自転車で二人乗りをしていたらUFO発見しました。



シューっと光って、消えていった。



「ちょ、高尾降りて!いまUFOが!」


後ろに乗っている高尾は間延びした声で「そんな非現実的なことがあるわけないだろー」 と言った。わたしのことを馬鹿にしている様子にカチンと来たが今はそれどころではない。前方斜め左の方向に大きな大きな光が落ちていったのを、わたしはこの目で見たのだ!そりゃ高尾はわたしの後ろにいるわけだから、見えなかったのかもしれないけれど。あの光を追いかけていけばもしかしたら地球外生命体と会えるかもしれない!そうしたらわたし有名人ジャン!


「まじで降りてよ高尾!光がなくなっちゃったじゃないか!」
「光って?ああ、さっきのでかい光が落ちていったアレ?」
「そうそれ!あーもー!」


高尾を後ろに乗せたままだとこれ以上早くは自転車をこげない。だから高尾を降ろして速くこいで、こいで、こいで、あの光の下へと行きたいのに。こいつってやつは。学校帰りにチャリアカーで帰ろうとしている高尾に見つかって、ダッシュで逃げたのに追いつかれてしまった。チャリアカーなんてそんなに速度でないだろと思ってたら高尾はリアカーの部分を学校の自転車置き場へ置いて行ったらしい。わたしを追いかけるので一生懸命で疲れ切った高尾は、わたしにチャリの運転を任せ、わたしの運転する後ろでのんびりとゆられていた。わたしもチャリに乗るなら後ろが良かったです。


次の曲がり角で曲がり、光を探したけれどもう見つからなかった。確かに大きな大きな光が、落ちていったのに。すごい速さで落ちていったのに。落ちたであろう方角は爆発音も衝突音もなにも聞こえなかった。あっちには確か海があったから、バシャーンなんて音があったっておかしくないのに。何も聞こえなくて、ガッカリした。わたしの目の錯覚だったのか、幻だったのか。UFOだと信じたあの光は一体なんだったのだろう。高尾は後ろで「なんだ、佐藤、諦めたんだ」と呟いた。わたしに聞いたのかもしれない。でも呟いたように聞こえた。



「あーあ、高尾が後ろにいなかったら追いつけたのかもしれないのに」
「今日は夜空が綺麗だなー」
「ホントだ」


光を追いかけるのに必死で、ずっと空を見ていたはずなのに、綺麗に光ってる星に気づかなかった。あの大きな光を追っていたからだろうか。今日は朝から良い天気だったから、こんなに星が見えるんだろう。こんだけ夜空が奇麗なら明日の天気はきっと晴れだ。ふらふらと覚束ない自転車に不安にならずに後ろに乗り続けている高尾の心は意外と丈夫にできている。わたしは運転しているから安定してるけど、わたしだったらこんなにふらふらしている自転車の後ろには乗りたくない。


「さっきのは、流れ星じゃない?」
「・・・あ」


高尾に言われて気がついた。あまりにも光が大きかったから、UFOだと信じて疑わなかった。あの光がUFOだとしたら爆発音や衝突音がするはず。だけどあの光はシューっと走って消えていっただけ。よくよく考えてみれば、流れ星に思えてくる。


「そうかもしれない」
「そうだろ」


わたしのこぐ自転車は頼りなく高尾を乗せて、家までと車輪を転がす。いつもなら街灯だけの薄暗い夜道も今日はなんだか明るく感じられた。


「高尾、知ってたの?流れ星だって」
「UFOだと思うほうが不思議だと思うけど」
「そっか。なんか願い事した?三回唱えると叶うってやつ」
「した。心の中で」


相変わらず高尾は抜かりないな、と笑った。その願い事は聞かないことにしよう。願いは誰かに話したら叶わないって、緑間、言ってたし。


「今日は月明かりがすごいなー」


道がこんなにも明るいのは、月明かりのおかげだとわたしは知らなかった。高尾はなんにでも気づく。うらやましいと思った。


「佐藤ー」
「なに?」
「願い事きかねぇの?」
「うん」






「じゃあコレは俺の独り言として聞いてくだい」と高尾は言い、そのあと 佐藤と俺が付き合えますように と三回唱えた。

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