セックスをし終わった後に、二人でお風呂に入ることは常だった。汗でどろどろになった二人が浸かる湯船は狭い。わたしは膝を抱えて、白澤を背もたれにするように湯船に入った。


「さっきの真帆ちゃんとってもかわいかったよ〜」
「そう?」
「うん」


わたしが振り返ると、白澤は目を猫みたいに細くして笑った。
白澤の言う「好きだよ」も「かわいい」も本心なのだとは思っている。だけどその言葉には全く重みがなくて、軽い。白澤の好きとかかわいいとかは、セックスをするためにある言葉にしか感じられない。男と女、突き詰めていけばその先にあるのはセックスなんだってことは分かっているけど、そこに気持ちを求めちゃいけないことなの?


「ほっぺなんて林檎みたいに真っ赤で、体からは桃みたいないいにおいするし、僕メロメロ」
「ふうん」


わたしがいくら素気ない返事をしても、わたしを褒めることをやめない白澤は、いったい何がしたいんだろう。ああ、セックスがしたいのか。

わたしはもっと白澤に甘えたりしたいんだけど、な。


「なんか素気ないねぇ」
「いつもどおりじゃない」
「そうだ、いつも通りだ。真帆ちゃんはツンデレだもんね」
「誰がツンデレなもんか」
「たまには素直に認めても良いんじゃない?」
「いつも素直ですー」
「そうそう、素直な真帆ちゃんが、僕はだいすきだからね」


セックスをするための、手段である白澤の甘い言葉に、わたしは何回溺れたら良いんだろう。何回溺れたら、白澤はわたしだけを見てくれるようになるんだろう。

白澤に興味ない振りするの疲れたよ。
体だけだって割り切っている振り、つかれたよ。
彼女にしてくれなんて、わがままな事は言わない。


「白澤、お風呂上がったらセックスしよっか」
「えー!真帆ちゃん大胆だね」
「それとも白澤はここでする方が好き?」


くるりと方向を変えて、わたしは白澤に向き直って、白澤の胸に手を添えた。お風呂のせいか赤くなった白澤のほっぺをぺろりと舐める。舌からでもわかる熱い白澤の体温に、わたしの体温も上がったみたいだ。


「僕はベッドで真帆ちゃんのこと可愛がりたいんだけどなぁ」


そう言っておきながら白澤は湯船の淵に腰をかける。ねぇそれって舐めろって事じゃないの?

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テーマ「人外ファンタジー」
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