「ちょ、先輩酔ってるんですか!?」
「酔ってない酔ってない、少し飲みすぎただけ〜」
「絶対酔ってますよね?」
「アブくんうるさいよ、君お酒飲んでる?」
「ボ、ボクはお酒はその・・・得意ではなくて」
「せっかくの飲み会なのに!!ほら飲みなさい!先輩の酒が飲めないって言うの!?」
「そういうことじゃなくて、ですね」
「ホラ、ついであげるよビール」
「あ、ありがとうございます」
「そーれ飲んで!飲んで!」
「と言うかさっきから先輩の胸がボクの腕に当たっているような気がするんですけど気のせいですか?」
「きのせいきのせい」
「そうですか」


くるくると回る世界の中で、わたしはアブくんに絡むだけ絡んで、そして飲み会半ばに眠りこんでしまった。わたしが飲みすぎたらこうなるのは常で、飲み会メンバーたちはわたしのことをほっといて飲んでいる中、アブくんだけはわたしから離れずにいてくれたと、後から聞いた。

アブくんの反応は面白いから、いつも絡んでしまいたくなる。絡み酒のわたしを拒絶しないアブくんは相当優しく出来た人間で、飲み会の席のことを思い返すたびに土下座して謝りたい気持ちに駆られる。結局土下座なんてしないで「ごめんねーあはは」なんて適当に謝るだけ。なんて情けない先輩なんだわたし。

目覚めは良い方だとは思うんだけど、日ごろの疲れも手伝って、わたしは結局目が覚めることはなかった。やっと目が覚めたころは、アブくんの背中の上で、おんぶされていることに気がつくまで少し時間がかかった。


「えええ!?アブくん!?」
「あ、先輩やっと起きたんですか」
「みんなは!?」
「もう帰りましたよ」
「なんですと!」
「先輩の家までもうすぐですから、このままおぶられていてください」
「ヤダよ下ろして!!!」
「ダメです」
「ひどい」
「だって先輩店から出るときにヒールぽっきり折ってしまったんですよ」
「マジで」
「はい。一応ヒールはボクが持っています」
「ありがと」


なんかわたし、お姫様みたいだ。アブくんはわたしの従者みたい。
それくらいわたしはアブくんの優しさで包まれていて、それに甘えてしまっている。どうしてアブくんはそこまでわたしを甘やかすのか。別に付き合っているわけでもなんでもないのに。アブくんの首に回した腕の力を少し強めると、「先輩?」と呼ばれた。


「アブくん、わたしアブくんの彼女になりたいなぁ」


ぽろっと本心が、口からこぼれてしまった。


「ボクは先輩の、恋人になりたいです」
「アブくん・・・!」
「先輩、あんまり抱きつかれると苦しいですよ」
「だってアブくん!!」


バカップルは世界を救う、そうは思いませんか。


「アブくん大好きだよ!!!」


そうか、わたしはずっと前からアブくんのことが好きだったんだ。

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