わたしが初めて、ウエディングドレスを着たとき、孝支は感極まって、泣いた。


「えぇぇ!?」
「だって、真帆、奇麗なんだもん」
「まだ試しに着ただけで、他のドレスも着るんだよ?」
「そうなんだけど・・・」
「泣くのはやいよー」
「俺のお嫁さん、すごくきれいです」
「うん、わかった。わかったから」


結婚式をあげるには、すごく時間がかかる。式の日取りはすでに決まっているけど来年の話で、一年も前からこんな風に下準備をしなくてはならない。わたし達は今日、ドレスを決めるために式場にやって来たわけだけど、まさかぱぱっと決めたドレス着ただけで孝支に泣かれるとは思ってもみなかったよ・・・!試着室の向こう側にいる孝氏は持ってきたハンカチで目をちょんちょんと抑えて涙を拭き、今度は思いっきり笑った。


「似合ってるよ」
「うん。ありがとう」
「楽しみだな、結婚式」
「そうだね。それまでにダイエットしなくっちゃ」
「しなくても大丈夫だよ」
「いやいや、やっぱり肩甲骨ぼこって出てる方が奇麗だよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そのままでも奇麗だよ」
「・・・」
「どうした?」
「恥ずかしいことばっか言わないで」
「えぇ!?俺なんか言ったっけ!?」
「さっきから奇麗だ奇麗だってずっと言ってる」
「だって奇麗だから仕方ないだろ」


衣装のお姉さん方がさっきから孝支が奇麗だっていうたびに笑ってる。そんなもんだからわたしも恥ずかしくなってきちゃって、グローブをつけた手で、顔を隠した。


「・・・もう一着、着てくるから」
「うん」


真っ赤になった顔を隠すようにわたしは試着室へ戻る。着替えを手伝ってくれるお姉さんが「素敵な旦那さまですね」とわたしに言って、「自慢の旦那です」って答えられたわたしは、相当孝支のことがだいすきみたいだ。そりゃあ、だいすきじゃなかったら結婚もしないか。あんなに感極まって泣いちゃうなんて、孝支も相当、わたしのことだいすきなんだなぁ。

今度はどんな顔をしてくれるのかな。純白のドレス、わたしに似合ってるって、今度は笑ってくれるかな。

試着室のカーテンが開く。孝支は目をきらきらさせて笑った。


孝支、わたしと出会ってくれてありがとう
孝支、わたしに恋をしてくれてありがとう
孝支、わたしと結婚してくれてありがとう


「孝支、誕生日おめでとう」
「え、あれ!?そうだっけ、今日だっけ!?あ、今日だ」
「来年の今日が結婚式なんだから、忘れないでよね」
「結婚式のことばっか考えてて自分の誕生日のことすっかり忘れてたよ」
「もう」


感謝しかないよ。孝支。生まれてきてくれてありがとう。

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