「これ似合うんじゃない!?」
「似合わないよ・・・」
「ネコミミ!」
「似合わないって」
「えー似合うと思うんだけどなぁ」


新しいパーカーが欲しいと言う研磨について服屋さんへ行く。
ついて早々目に入った猫耳つきパーカー。
似合うと思って棚から取り出して研磨に当てて見せると露骨に嫌そうな顔をされた。
似合うと思うのに。


「んじゃあコレは?」
「ウサミミじゃんもっとやだ」
「研磨はいったいどれがいいのさ」
「これかな」
「普通すぎる!」


研磨が選んだパーカーは本当に普通で、ネコミミもついていなけりゃウサミミもついていないパーカーだった。
それじゃあ研磨の可愛さを表現できないのに。
他のショップを渡り歩いてみても、わたしがいいなと思ったパーカーはことごとく却下された。
ここまで却下されると心が折れそうになるよ、わたし。


「ねぇ、なんで俺についてきたの?」
「だって研磨とデートしたかったんだもん」


でもデートしようとか言えないし、どうしたもんかと思っていたその時、研磨がパーカーを買いに出かけると言ったから、わたしはついて行ったんだ。
ついて行けば疑似デートできる。
研磨は手に取った服を棚に戻すと、わたしのことをまじまじと見た。
いや、そんなに見つめられると照れます。


「・・・楽しかった?おれと出かけて」
「うん」


ことごとく却下されて、心も折れたけど、それでもやっぱりこうやって研磨と出かけられることが楽しかった。
毎日バレーをする研磨の胸の中でわたしの存在はきっとちっぽけなものだ。
研磨はわたしとお付き合いをしてくれているけど、恋人らしいことは全然していない。
会いたいとかも言われたことない。


「なら、よかった」


研磨はふわりと笑った。
もうそれだけで、今日のデートは大成功だったと思える。


「…言ってくれたらいくらでもデートするのに」


研磨はずるい。


「うん」


それって、わたしが言わなくちゃデートしないってことじゃない?

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テーマ「人外ファンタジー」
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