旦那様が帰って来るって。遠征で遠くに行ってた旦那様が、帰ってくるんだって。まずはこの汚い部屋を何とかしないと。大輝がいないから好き勝手散らかし放題にしていた部屋。この部屋の散らかりっぷりを見ると、さすがの大輝も怒るような気がする。アイツだって片付け苦手な癖に、わたしが散らかすと怒るんだもん。

だからといって大輝がいないからこう自堕落な生活を送るのも、良くないよ、自分。

服はとりあえず全部洗濯機に詰めて、ゴミはちゃんとゴミ袋に入れて、食器は全部洗って拭いて食器棚へ。白米はあるけど冷蔵庫には卵と牛乳と納豆しかない。これじゃあ晩御飯も作れない。とりあえず掃除機かけて、と。掃除機ってうるさいし重たいし、どうも苦手。クイックルワイパーは楽だけど埃取れてるような感じしないし却下!掃除終了。おっと洗濯機も脱水終わってるさーて干すぞ。よくもまあこんなに洗い物溜めたよなぁわたし・・・。洗濯物も全部干して、ゴミもゴミ捨て場に持って行って、ようしようし、片付いた。あとは晩御飯の準備。もうカレーでいいよカレーで。楽だし。お財布持って、スマホ持って、エコバックにそれら入れて、楽な格好をしてアパートを出た。

近所のスーパーでカレーの具材を買って、寄り道しないですぐに家へ向かう。早めに作り始めないと、いつ大輝が帰ってくるかわからないからね。鍵を差し込みねじる。カチャリと言う音が聞こえて、ドアノブを捻った。・・・あかない。あれ?出かけるときちゃんと鍵閉めたよね?もう一度鍵をねじる。カチャリと言う音が聞こえた。恐る恐るドアノブを捻ると、ドアを数センチ、開けた。なに・・・泥棒?そーっと隙間から部屋の中を盗み見ようと顔を近づける。すると視界がいきなり真っ黒になり、ドアがばーんとこじ開けられた。


「ぎゃあああああ!!!!」
「んだよウルセーな!」


びっくりして大声を出す。こじ開けられたドアの向こう側には、眉間に皺を深く刻んだ大輝が、耳に指を突っ込んで不機嫌そうな顔をして立っていた。


「大輝!?もう帰って来たの!?」
「ギャーギャーピーピーうるせぇんだよ」


大輝はそういうとわたしの右腕をグイッと引っ張って、わたしを玄関の中に、いや、大輝の胸に、押し込んだ。わたしの後ろでパタン、とドアが閉じた音がする。突然抱きしめられて、わたしは混乱した。突然だから、じゃない。いつもそんなことしない大輝だから、だ。


「どうしたの?」
「だまってこうされてろ」
「えー黙ってろなんて無理だよ」
「喋んな」
「なになに、遠征先で寂しかったの?」
「んなことあるか」
「そうだよね。大輝だもんね」
「だから喋んな」
「無理だよ」


喋ってなかったら、恥ずかしくてしょうがなくて死んじゃいそうなのに。


「わかった」


大輝はそう言って、わたしから少し体を話すと、わたしの首をぐいと持ち上げてキスをした。ああ確かに、これならわたし、喋れないわ。

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