コンビニ花宮、パピコを見つめる。の巻き




さむいさむいと心の中で呪文のように呟きながら、いつも通り、コンビニに入る。
とくに用事があるわけではないけれど、ここのコンビニはわたしの帰宅路にあって、寒すぎる日には温まるために立ち寄ったりしてしまっている。
すっかりここのコンビニの常連なわたしだけど、ほかにも常連さんはいるわけで。


「や、花宮くん」
「・・・ちっ」


舌打ちされた気がするんだけど、気にしないにいしよう。
今日の花宮くんはアイスケースの前にいて、なにかをじっと見ていたようだった。
わたしのことに気がつくなり、アイスを見るのをやめてそっぽを向いた。
何を見ていたのか気になったわたしは花宮くんの近くに歩み寄ってアイスケースの中を覗く。


「パピコ見てたの?」
「!! んなわけねぇだろバァカ」


花宮くんって実は非常に分かりやすい人だと思うんだよね。


「こんなに寒いのに食べたいの?パピコ」
「誰もんなこと言ってねぇ」
「そうなの?」


花宮くんはいつも通りわたしの脇を通り過ぎて出口へ向かう。
アイスケースからパピコを取り出して、ちょうどのお金をカウンターに置いて花宮くんを追いかけた。
コンビニで温まるつもりだったのに、そんな時間もなかった。
しかも今わたしの手にあるパピコはとても冷たい。ホッカイロの逆。
コンビニから出てすぐのところに花宮くんの背中が見えた。
マフラーを巻き直して、走り出す。
向かうは花宮くんの元。


「はーなーみーやーくーん!」


大きな声で花宮くんを呼ぶ。
でも振りむいてくれない。
当然だ、あの花宮くんのことだ。
恥ずかしがって振り向いてくれないんだ。


「はーなーみーやーくーん!」


走って追いかける。
右手に持ったコンビニのビニール袋ががさっと鳴った。
左手を伸ばして花宮くんのエナメルバックの肩ひもを掴む。
花宮くんはぐえっと言って苦しそうな声を出した。


「なにすんだよ」


眉間に深く刻まれた皺に、わたしは臆することなく手に持ったコンビニの袋からパピコを取り出す。
花宮くんは目をぱちくりさせてわたしとパピコを交互に見る。


「はんぶんこする?」
「ハァ?さみいからやだ」
「じゃあわたしが全部食べる」
「風邪ひくだろ」


わたしの手からパピコの袋を取り上げた花宮くんはバリっと袋を開けてパピコを取り出した。


「手が冷てぇ」


嫌々ながらパピコを掴むとそのまま真っ二つに。
そりゃアイスだから冷たいよ。
わたしに一つ手渡して、花宮くんはパピコを口に咥えた。


「つめて・・・」
「じゃあわたしが全部たべるよ」
「やんねぇよ」
「そうだよね、間接チューになっちゃうもんね」
「バァカ」


並んで歩くのも、嫌がらなくなってきましたか。花宮くん。

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