俺が好きになった人は、とても料理の上手な人だった。潜在犯な俺に恋人ができるだなんて思ってもみなかったし、潜在犯である俺を好きになってくれる人が現れるとも思っていなかった。監視官である彼女が俺と付き合っているということは周りには内緒で、いつも会うのは俺の部屋だった。周りは気が着いていたけど、見て見ぬふりをしてくれていたんだろう。


「シュウくん、秘蔵のお酒持ってきました」
「マジで!?」
「マジです」
「ポン酒!?」
「うん」


彼女は嬉しそうに笑って、「今からご飯作るからくつろいでて」と言ってキッチンに立った。彼女は手際良く下ごしらえをしている。俺の視線に気が着くと首をかしげて、「テレビでも見ていなよ」と言った。見ていたい、けど、もっと近くにいたい。俺はソファから腰を上げて彼女の横に立つ。


「俺にも教えて、料理」
「シュウくん下手じゃん、料理」
「覚えれば上手になれるからさー」
「分かった。じゃあオリーブオイル垂らすからニンニク炒めて」
「普通の油とオリーブオイルって違うの?」
「うん。香りが違うんだよ」
「へぇー」
「あ!強火じゃなくて弱火ね!」
「ハイハイ」
「焦げ付かないように気をつけてね」


潜在犯である俺が、人並みの幸せを感じられるようになるとは。彼女はそこにアサリを入れて、俺のバーカウンターにあるお酒を手に取り、フライパンに入れる。


「あ!!それ高かった酒!!」
「パスタがさらに美味しくなるよー」
「高いからちびちび飲んでたのに・・・真帆ヒドイ」
「はい!強火にして!」
「えぇ!?」
「はいフタ!」


俺がフライパンを振るっている間彼女はささっとスープとサラダを作る。アサリの口が開いたところで、塩コショウで味付けをしてゆであがったパスタを入れる。ゆで汁も入れ、パスタとソースを絡める。彼女は一本ちゅるりと食べて味に満足したのか大きく頷いた。


「はい、お皿に盛ってー」
「はいはい」
「完成!」
「あ、でもボンゴレにポン酒って合わなくネ?」
「合わないかな」
「うん」
「じゃあシュウくんが選んでよ」
「そーしよっか」


お皿をテーブルに持っていき、バーカウンターで適当にお酒を見つくろう。何本か選びテーブルに持っていくと彼女はうきうきした表情をして待っていた。美味しそうな香りただようそこは、俺の幸せがある。


「真帆が持ってきたポン酒、どうしよっか」
「んー置いてく」


お酒を置いてくってことは、また、彼女は俺のところへ来てくれるってことだ。それが嬉しくてたまらなかった。


「じゃ、いただきます」
「いただきます」


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