・・・わたしも大輝と同じ位バスケができたらよかったのに。


ストリートのバスケコートで、大輝が汗をキラキラと輝かせてバスケをしている。おおすごいすごい。一人でやってるのにディフェンダーが2人も3人もいるように見えてくる。大輝は本当にバスケが好きなんだなぁ。そしてバスケが上手なんだなぁ。わたしもこれくらいできたらいいのに。わたしができるのはせいぜいレイアップシュートくらいなもので、大輝と1on1をしたらボロ負けは目に見えて分かっている。


「真帆ー腹減ったー」
「そう来ると思った」


大輝は一段落ついたのか、バスケするのをやめてわたしの方へとトコトコと歩いてきた。傍らに置いた鞄からサンドイッチを取り出し大輝に手渡す。ラップを取り、大きな口でサンドイッチにかぶりつく大輝を見ると、こいつなんでも楽しそうにやりやがるな、とわたしは思うのだ。バスケするのも楽しそうだし、ご飯食べるのも楽しそうだ。人生楽しそうな大輝。わたしと出会う前に大きな挫折に悩んだ時もあったかもしれない。そのことを知りたくないと言ったら嘘になるけど、これから先、また大輝が壁にぶちあたる時が来るかもしれないんだから、そのときわたしが支えになればいいだけの話。


「暇じゃなかったか?」
「楽しかったよ」
「ずっと俺のこと見てただけじゃねぇか」
「うん。ずっと大輝見てた」
「・・・」
「あれ、ちょっと赤くなりましたか大輝さん」
「うっせ」


大輝はタオルでゴシゴシと顔を拭くと、ふーっと息を吐いた。いつの間にかサンドイッチはすべて大輝の口の中に入ってしまっていたらしい。お茶の入ったペットボトルを渡すと大輝は勢いよくお茶を飲んだ。ゴクゴクと喉仏が動いて、ああ、お茶をもこんなに美味しそうに飲むなんて、とわたしは思ってしまう。


「んじゃ行くか」
「どこへ?」
「スケートしに」
「スケート場へ?」
「おう」
「わ、わたしスケートできないよ!」
「安心しろ」
「大輝は滑れるんだね?」
「俺もできない」
「えぇ!?」
「俺は運動神経いいからすぐできるようになるぜ」
「いや大輝ができるようになってもわたしができるようにならなかったらわたしのためにならないよ!」
「真帆は盛大にコケそうだな」
「運動音痴なめんな」
「その運動音痴をレイアップシュートできるようにしたのは俺だぜ?」
「ソウデスネ」
「・・・」
「いいよ、行こう!こうなりゃヤケだ!」


冬だし、寒いし、来週の天気予報で雪マークついてたし、雪降ったら出かけたくないし。今日は晴れているし。

日に焼けた大輝の腕を掴んで歩き出す。半歩遅れて大輝がわたしの後に着いてきた。きっとわたしの後ろで大輝は、嬉しそうにしてるはず。

結婚してから一緒にいる時間が増えて、こうやって二人で遊びに出ることが少なくなってしまった。だからこんな風に二人で一緒に遊べるときは、とことん楽しまなくちゃいけないんだって、大輝の顔を見ると自然と思えてくるんだよ。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -