花宮つめあわせ




コンビニに花宮くんがいた。
保温器の中の肉まんを睨んではうーんと唸っている。
腕組みしながら睨むものじゃないと思う、肉まんは。

「花宮くんじゃん」
「!?」
「え、なにびっくりしてんの」
「・・・いつから見てたんだよ」
「え、さっき?」
「そうかよ」

花宮くんは肉まんを睨むのをやめて何も買わずにコンビニを出た。
わたしはあったかいお茶を買ってから出る。
もう花宮くんの姿はどこにもなかった。


::


コンビニに花宮くんがいた。
今度はおでんを見つめている。
ほかほかと湯気が花宮くんに当たっていて、花宮くんのほっぺが赤くなっていた。

「花宮くんじゃん」
「!?」
「今度はおでん?」
「うっせ」
「あれ?買わないの?」

花宮くんはわたしの脇を通り過ぎてコンビニを出て行く。
そんなに見つめるくらいなら買えばいいのに。
わたしは唐揚げを買ってからコンビニを出た。
花宮くんの姿はもう見えなかった。


::


コンビニに花宮くんがいた。
高校の帰り道にあるコンビニだけど、それにしても良く見かけるなぁ。
今日の花宮くんはクノールのカップスープの素の前で腕組をしながら悩んでいる。
花宮くんはひたパン派なのか、つけパン派なのか。

「や、花宮くん」
「またお前かよ」
「花宮くんはひたパン派?つけパン派?」
「ひたパンに決まってんだ・・・なんでもねぇ」
「あれ?買わないの?」
「いるかバァカ」
「・・・」

缶スープのコンポタを買ってコンビニから出ると、道のずっと先に花宮くんの後ろ姿が揺れているのが見えた。


::


わたしがコンビニで立ち読みをしていると花宮くんがコンビニに入ってきた。
まだわたしに気が付いている様子はない。
いつも買っている雑誌を手に取りこっそり花宮くんの後ろを歩く。

「なにコソコソしてんだ」
「あれ、ばれてた?」
「最初からな」
「あーあ、残念」

手に持っていた雑誌をカウンターに置いて会計をしてもらう。
そのわたしの後ろに缶コーヒーを手にした花宮くんが並ぶ。
会計を終えてコンビニから出ると、花宮くんが「待てよ」と言ってわたしを呼びとめた。

「なに?」
「やる」
「・・・ブラックコーヒーじゃん」

ぽいっと投げられた缶コーヒーをナイスキャッチする。
わたしが飲めないブラックコーヒーで、思わず眉をしかめる。

「なんだよ飲めねぇのか、ガキだな」
「くれるなら最初から好みを聞いておけばいいと思うの」
「じゃあ返せ」
「やだ」

わたしの腕の中から缶コーヒーを取り返そうとする花宮くんの手をどかす。
花宮くんの手にはすでにもう一つ缶コーヒーがある。
じゃあわたしのあげたら二つになっちゃうじゃん。

飲めない缶コーヒーをかしゅっと開ける。
グイッと一口、口に含む。
うう にがい
ちらりと花宮くんの方を見る。
寒さに耐えられなくなったのか、ほっぺに缶コーヒーをくっつけていた。

「は はなみやくん」

温かさに顔がほころんだようで、ふにゃーっと顔がゆがんでいる。
驚いてわたしが花宮くんの名前を呼ぶと、花宮くんがはっとして持っていた缶コーヒーを落とした。

「今顔がスライムみたいになってたよ」
「・・・ダマレ」
「可愛いとこあるんじゃん、花宮くん」

よくよく考えてみたら、わたしは花宮くんの可愛いところをたくさん知っていた。

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