「真帆コタツ買いに行こうぜ!」


鉄平はそう言ってにこやかな笑みをわたしに向けた。自虐になってしまうが、我が家は狭い。狭い上に鉄平は物を捨てられない人だからどんどん物が溜まって行ってしまう。勝手に捨てると怒るし・・・。何に使うかよく分からない、わたしにはガラクタにしか見えない物も鉄平にとっては宝物なんだろう。繰り返し起こられたことにより、わたしも少し寛大になった。鉄平の大切なものは、わたしもちゃんと大切にしなくちゃいけないって、よく分かったから。

でもね、でもね、鉄平。
新婚で引っ越してきたばかりの、狭いけど築浅で奇麗だったこのアパートもね、たった数カ月でこんなに物が溢れているんだよ。その部屋にコタツをどうやっておくと考えているのですか。


「冬だろ!冬と言えばコタツだろ!」
「いや、それはそうなんだけども」


狭い上に鉄平の体は普通の人のそれよりも大きい。だからなおさら部屋が小さく感じられるんだよ!しかも鉄平はでっかいからコタツだって大きいヤツ買わないと体おさまらないよ・・・。


「お金の心配か?それは大丈夫だぞ。冬のボーナス出たし」
「そういう問題じゃなくて」
「じゃあ何の問題だよ」
「いやあの、」


すごく言いにくい。鉄平の荷物が溢れかえっていてこたつの置き場所がないってこと。テーブルがあってソファがあって、このテーブルをどこかにしまわない限りはコタツを置く場所がありません。コタツは場所を取るんだよ鉄平。そのことわかってる?


「なんだ〜?夫婦になったんだから、言いたいことはちゃんと言うって、決めただろ」
「決めたけど」


喧嘩は嫌だ
怒られるのもいや
だったら言わないで我慢しちゃった方が楽なんじゃないの?
その考えがそもそも間違いなのかな。


「何言われたって、俺絶対真帆のこと嫌いにならないぞ」
「え、あ、うん」
「コタツ代は俺のお小遣いから出してくれたっていいし」
「うん」
「心配することは何もない」
「そうだね」
「よし、じゃあ買いに行こう!」
「どこにコタツ置くの?」
「テレビが見やすいトコだろ」
「じゃあそこ?」
「狭くないか?」
「んじゃあこっち?」
「・・・狭そうだな」
「それじゃあ、あっち?」
「テレビ見えないだろ」
「どうするのよ」
「引っ越すか」
「!?」


冗談かと思って鉄平の方を向く。鉄平は笑ってはいたがその瞳は本気なようで、こうなったらテコでも動かなくなるのが鉄平だ。わたしは観念する。


「そのまえに鉄平の荷物、全部奇麗にしようか」


だって契約期間まだまだあるし、今引っ越したら違約金払わなくちゃいけないし、ってこと考えたら引っ越すのはよくないと思うんだよね。いずれ引っ越すとしても、それは今じゃない。


「す、捨てるのか!?」
「奇麗にするだけよー」


鉄平のボーナスも入ったことだし、収納家具でも買い足そうかな。それで部屋がすっきりしたら、「コタツも買いに行こう、ね?」


鉄平は、大きな子供みたいだ。

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