「ただいまぁ」
「おかえりなさい!」


ぱたぱたとスリッパを鳴らして良が玄関にやってきて、わたしの顔を見てふんわりと笑う。この笑顔を見ると今日も頑張って働いたことが、報われるような気がするんだ。

わたしたちは普通のよくある夫婦とは違う。わたしが働きに出て、良が家のことを全部やる。男性サラリーマンに負けないくらいの収入のあるわたしは、別に良が働いてなくても平気なのだ。良は料理も裁縫も掃除だって得意で、バッチリお嫁さん業をこなしているから、わたしは良に対して文句の一つもない。ただ・・・お弁当のクマさんはちょっと恥ずかしい。嬉しいんだけどね。


「今日の晩御飯はなにー?」
「今日はエビグラタンだよ」
「ぐらたん!」


リビングに行くと、部屋は温まっている。ニャアと飼い猫がわたしの足もとにやってきて、わたしの足にすりすりとおでこで擦る。しゃがんで頭をわしわしと撫でると嬉しそうに目を細めた。いいなぁ、お前は。一日中良と一緒にいられて。
鞄をどさりとソファに置くと、良はそれを持って書斎へ行く。わたしがコートを脱いで椅子に掛けると、ハンガーを持ってきて掛けてクローゼットにしまう。ああ、なんてできた嫁。


「いつもお疲れ様。先にお風呂にする?」
「ううん。ご飯」
「わかった。手洗って待ってて」
「うん」


手を洗って椅子に座って、キッチンで作業している良を見る。良は手際よく料理を作っていて、わたしは惚れ惚れした。わたしが料理やるとね、ちょっと大変なことになるから。良がしてくれるから本当に助かっている。わたしの視線に気がついたのか、良は顔をあげて、首をかしげた。あざとい・・・!チーズの焦げる香りがして、わたしのお腹がぐぅと大きく鳴った。うわぁ聞こえちゃったかな。


「すいません、もうすぐできるから」


ああ、聞こえちゃったのね。


「謝ることないよ。ありがとう」
「僕はこれしかできないから」
「そんなことない!掃除だって洗濯だっていつも助かってるよ」
「嬉しいな」


へへへと笑いながらじうじうと良い音を立てるグラタンを持ってきて、テーブルに置く。


「良と結婚してよかったなぁ」
「それは僕もそうだよ」
「良からのプロポーズ待ちだったのに、まさかわたしがプロポーズするとは思わなかったよ」
「僕もびっくりしたよ」


良が仕事を辞めて、無職になってしまって思い悩んでいたとき、「じゃあ結婚しちゃえばいいじゃん!わたしがお金稼いでくるから!」って逆プロポーズしちゃったんだよね。いやあ懐かしい。懐かしいと言っても半年前のことなんだけど。親に反対されたけど押し切った。これが正解なんだと、わたしは思っている。ほかほかの料理が目の前に並んで、そのことを確信する。


埃一つないピカピカの部屋。美味しい料理。可愛い猫。わたしが帰るこの家に、良がいてくれてよかった。

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