テーブルで向かい合わせに座り、なにやら文庫本に目を通しているくろ・・・テツヤさん。いやぁ絵になるなぁ。窓から差し込む光にテツヤさんの姿が溶けてしまいそうだった。その見つめられている文庫本になりたい。


「テツヤさん」


わたしがそう呼ぶと文庫本から目を離し、テツヤさんはわたしのことをやっと見た。


「・・・なんか照れますね、その呼び方」
「うん。わたしも自分で呼んで照れた」


付き合っているときからずっと黒子くんと呼んでいた。でも結婚してわたしの名字が黒子になった時、わたしはテツヤさんと呼ばないといけないのは当然なわけで。


「それで、どうかしましたか?」
「この間ガラポンでプラネタリウムの無料チケットゲットできたんだけどさ、一緒に行かない?」
「いいですね、プラネタリウム」


そう言ってまた文庫本に目を落とす。そんなに小説が読みたいの?ねぇわたしのこともちょっと見てよ。ガラポンでプラネタリウムのチケットゲットできたのはラッキーだったけど、わたしのアイがガラポンに届いたんだと思うのです。だからゲットできたのだと思うのです。

テツヤさん、気がついてる?これはわたしからのデートのお誘いなんだよ。
それなのになんでずーっと本読んでるの?


「くろ・・・テツヤさん」
「あ、黒子くんって言いそうになりましたね」
「テツヤさんだってこの間わたしの旧姓で呼んだじゃない」
「そうでしたっけ」
「そうです」
「いつプラネタリウムに行きますか?」
「いつがいい?」
「今度の休みが良いです」
「うんそうだね」
「休日出勤にならないように仕事頑張ります」
「うん」


あと何ページでその本読み終わるの?
あと何分待てばその本読み終わるの?


「黒子くん」
「・・・」
「黒子くん」
「・・・・・」
「黒子くん」
「・・・真帆さん?」
「やっとこっち向いた」
「黒子くんって呼ばないでください」
「じゃあこっち向いてよ」
「そうですね」


パタンと本を閉じてテツヤくんはやっとわたしのことを見て、笑った。


「今から行きますか?プラネタリウム」
「・・・今度の休みが良いんじゃなかったの?」
「真帆さんと一緒ならいつだって平気ですよ」
「んーでも今度にしようよ」
「そうですか?」
「うん」


わたしは立ち上がり、テツヤさんの隣に座り直す。少しだけテツヤさんは驚いたようだった。自分の手をテツヤさんの太ももに乗せ、「今日は一日くっついていたい」と言ってみる。テツヤさんは耳を少し赤くさせて、太ももに乗っていたわたしの手を握った。

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