和成さんの誕生日会を終えて食器を片づけている。仕事帰りに和成さんはケーキを買ってきてくれたが、わたしもケーキを作っていて、家にはホールケーキが二つになってしまった。和成さんはわたしが和成さんの誕生日を忘れていると思っていたらしく、自らケーキを買ってきたのだと言う。わたしが忘れるわけがないのにね。二人きりの誕生日会は家で行われて、派手ではなかったけど、よくできたと思っている。今までは別々に住んでいたから、誕生日はだいたい外食だったけど、結婚して一緒に住むようになったんだから、家で二人で過ごしてみたかった。

和成さんは先ほどお風呂へ行かれた。その間に片付けを済ませなくちゃ。和成さんの誕生日に解禁になるあのワインが冷蔵庫で冷えてわたし達を待っている。ワインの美味しさに気づくには、わたしにはまだ早いようで、美味しさは分からないけれど、つい買ってしまっている。テーブルが奇麗になったところで、シンクに溜まった食器を洗うべくわたしは腕まくりをした。


「うお、もうテーブル片付いてる!」


さっきお風呂に行ったばかりの和成さんがもう戻ってきてしまった。「早いですね」と言うと、「だってもう日付変わったからな」と返された。壁にかかっている時計に目をやると、針は12時を回っていて、11月22日を迎えている。


「気にしないでゆっくり入ってきても大丈夫でしたのに」
「さっきまでは俺の誕生日だったけど、日付変わったらいい夫婦の日だよ」
「?」
「11月22日。いい夫婦、でしょ?」
「ああたしかに」
「結婚する前は夫婦じゃなかったから気にしてなかったけど、結婚したら気になっちゃって」


和成さんは少しだけ照れ臭そうに笑って、「だから片付け、俺も手伝う」と言って腕まくりをした。そんな和成さんを、わたしはとても好きで、そして和成さんと結婚してよかったなぁと実感する。


「今年から俺の誕生日と良い夫婦の日はセットだからな」
「セット?」
「俺の誕生日祝ったら、次の日は二人で仲良く居ようってこと」
「わかりました」
「・・・前髪伸びたな」
「そうですか?」
「自分で切んなよ。ぱっつんになるんだから」
「いいじゃないですか、ぱっつん」
「気に入ってんだ」
「はい。でも前髪長くなったら和成さんが見えないから」
「切っちゃえ」
「切りますよ」


高校一年生のあの日から、わたしの前髪はいつでも目にかからない長さのままなんだ。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -