「大我と結婚してよかったわー」


お鍋をつつきながらわたしが言うと、キッチンからなにやら新しいタレを持ってきた大我はぎょっとした顔をして「おま・・・いきなりどうした」と言った。失礼な奴め。


「いや、だってさ、こんなに美味しいお鍋が食べられるんだよ?幸せすぎるでしょ」
「なんつーか変だぞさっきから。俺と結婚してよかったとか幸せすぎとか。なんかアブネーヤツでも食ったか?」
「大我の手料理しか食べてないよー」


タレをテーブルに置くと大我はいそいそとこたつの中に入って来る。大我の器に鍋の具を取り寄せ、渡す。今日はモツ鍋で、鍋のスープはあっさり塩味だ。本場のモツ鍋とか食べたことないけどこれは美味しい。美味しいよー。こんなに美味しいご飯をわたしは毎日のように食べている。これ以上の幸福がどこにあると言うのだ。


「こっちがピリ辛ダレで、こっちがニンニクダレ。んでこれがゴマダレ」
「おおお」
「どれでも合うと思うからだまされたと思って全部混ぜてみろ」
「えっもったいないから一つ一つ食べる」


お鍋は有に四人前以上はありそうな量。まあ大我がいたらこんなのすぐに食べ終わっちゃうか。大我はわたしが美味しい美味しい言いながら食べると、すごくホクホクした顔をするんだ。その顔の可愛さったらないね。大我が嬉しそうな顔をするから、わたしも食べ甲斐があるってもんだよ。


「今度石狩鍋が食べたい」
「石狩って鮭のヤツか?」
「多分それ」
「明日な」
「明日作ってくれるの?」
「食べてぇんだろ」
「うん」
「じゃあ作ってやるよ」
「大我優しい」
「ウルセー」
「大我優しい」
「二度も言うな!聞こえてるっつーの!」
「いやほんと、わたし大我と結婚してよかったわ」
「あーハイハイわかりました」
「ほんとだよ?」
「・・・たまには真帆も料理しろよな」
「えっなんで?わたし大我ほど料理上手じゃないよ。フツウだし」
「お前が!作るとなんつーかフツウだけど美味しく感じんだよ」
「大我なんかマズイ物でも食べた?大我がそんなこと言うなんてオカシイ」
「さっきから散々真帆はオカシイこと言ってるけどな」
「うーん。今更ながら幸せが大爆発しちゃってね」
「いいから食え」
「うん」
「あちっ・・・」
「大我」
「フーフー なんだよ」
「結婚してくれてありがとう」
「・・・俺が料理下手だったらどうすんだよ」


一瞬考えたけど、うん。そうだねやっぱり。「大我が料理下手でも、多分わたし大我のこと好きになってたよ」


トクトクと注がれたビールをぐいっと飲み干す。お鍋にビールは最高だね。大我も同じようにビールを飲んで、「らしくねーな」なんて言いつつも、嬉しそうな顔をした。

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テーマ「人外ファンタジー」
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