結婚なんて、恋人の延長線上のものだと思っていた。付き合っているときから老夫婦みたいだねと言われてるわたしたちには、新婚生活なんて耳には甘いけど、結局付き合っているときと変わらない。甘い雰囲気もへったくれもなにもない。それがいいから、わたしは大地と結婚したんだけどね。日捲りカレンダーを一枚剥ぐって、見事に1が並んだことに少しだけ感動する。しばらくカレンダーを見つめていると、歯磨きをしながら大地はわたしの横に並んでモゴモゴと言った。「今日はポッキーの日か」ああ、そっか。すっかり忘れてたけど今日はポッキーの日と呼ばれているんだった。


「そういえばそうだったね」
「ん」


またモゴモゴと「口ゆすいでくる」と大地は言って、洗面所に向かった。ポッキーを定期的に食べる習慣はない。食べたいお菓子なんてその時々で違う。でもそんな中でポッキーを選ぶことなんて、滅多にないなぁと気がついた。仕事帰りにポッキーでも買ってこようかな。

洗面所から戻ってきた大地はすでに背広に着替えていて、出勤したくはバッチリと整っているようだ。シャキッとサラリーマンの格好をした大地を見るのはいつものことで、付き合っているときと何ら変わりはない。わたしの名字が澤村になったくらいで、いちゃいちゃしたりとか、あまーい雰囲気になったりだとか、そんなことは全くと言っていいほどない。倦怠期とかそういうんじゃなくて、大地とは付き合いたての時から、ずっとそうだったから。これが普通なんだ。


「そろそろ行くわ」
「あ、うん。鞄取ってくる」


大地が玄関に向かい、わたしは鞄を取りに書斎へ向かう。玄関に戻ると大地は皮靴を履いている。いってらっしゃいのチューもハグもない。それがわたしたちなのだから。


「いってきます」


・・・おかえりのチューくらいしてみようかな。スーパー行ったらポッキー買って、大地の帰りを教えるインターフォンが鳴ったらポッキー咥えて玄関で待ち構えてみようかな。たぶん大地なら「何やってんだよ。ばーか」なんて言って、わたしを小突くんだろうなぁ。


「いってらっしゃい」


うん。でもやってみたらきっと、いや絶対楽しいと思うんだ。普段老夫婦みたいだねと言われるわたしたちだけど、ちゃんと新婚さん、なんだし。

そんなことを考えながら大地を見てると、珍しく大地はわたしの頭をくしゃ、と撫でて笑った。


あーもうずるい。かっこよすぎるよ。

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