「こおら、いつまで寝てんだ！」 旦那様の声で目が覚めた。 「ううう寒いいぃぃぃ布団返してぇぇええ」 バサッと布団をはがされ、わたしはパジャマ一枚で布団に寝転がっている。寒い寒い寒い。布団布団布団。目を開けずに両手で布団のありかを探すけれど見つからず、嫌々ながら目を開けた。そこには仁王立ちで布団を担いでいる幸男がいた。眉間に深い皺、オデコに浮かんだ青筋。 「今何時だと思ってんだ」 「まだ暗いじゃん・・・六時くらいでしょ・・・」 「八時」 「そう、八時。八時！？」 飛び起きて時計を確認する。時計の針はばっちりと八時を指していた。 「仕事！遅刻するじゃん！！幸男何やってんの！！！」 「なぁ」 「なに！？」 ベッドから降りて急いで顔を洗って髪の毛を整える。ご飯もお弁当も作らなくちゃいけないって言うのに、忙しいって言うのに幸男はそんなのお構いなしにわたしの後をついて歩き、話しかけてきた。つーか幸男家事手伝ってくれたっていいじゃん！ 「今日何曜日だと思ってんだ？」 「え？昨日が金曜日だったから、今日は」 「土曜日だろ」 幸男はにやりと笑い、「休日なのによく早起きしたな」と言った。やられた。休みの日だから昼まで寝てようと思ってたのに・・・！キッチンに立って冷蔵庫から卵を取り出した状態でわたしは動かなくなった。幸男があんな顔してわたしのこと見てくるから今日仕事の日だって勘違いしちゃったじゃないか。 「早起きしたことだし、今日どっか出かけようぜ」 「やだよ寒い」 「出かけんだよ。ほら行くぞ」 「ええええメイクしてない！」 「スッピンでいい。むしろそのほうが良い」 「そそそそれにまだ八時でしょ？どこも店開いてないよ！」 「そのうち開くだろ」 「さむいよー出かけたくないよー」 「たまにはいいだろ」 急に幸男が声のトーンを下げるもんだから、わたしははっとする。そう言えば一緒に住むようになってからデートなんて、しなくなっちゃったね。 「そうだね、うん。でもおめかしくらいさせて欲しいな」 「・・・早くしろよ」 いつもだらけちゃうわたしだけど、デートの時くらい奇麗な奥様でいたいから。 |