現パロ





一日に数回、わたしは慎也をガラス越しに見ることがある。それは慎也が煙草を吸うとき。慎也は家の中では煙草を吸わない。ベランダに出て数本吸って、部屋に戻ってくる。煙草の煙が苦手なわたしにとってありがたいことなのだけれど、さすがに11月となれば外の気温はぐっと下がるから外で煙草を吸っていたら寒いはずだ。寒空の下慎也を外にほっぽり出して煙草吸わせるなんて、わたし鬼嫁もいいとこなのかもしれない。そう思ってベランダにいる慎也の方を見る。何本目の煙草なのだろうか、慎也はわたしに背を向けてふぅと白い煙を吐きだした。ぷかぷかぷか。わたしの視線に気がついたのか慎也は振り返って、また煙草を口に咥える。わたしが口パクで「さむくない?」と言うが、慎也には全くもって通じず「は?」と言いたげな顔をされた。くそう。


慎也は心行くまで煙草が吸えたのか、ベランダに置いてある灰皿に煙草を押し付け、火を消してリビングに戻ってきた。少し鼻の頭を赤くして「寒かった」と言う慎也に対して、少しだけ申し訳なく思ってしまう。二人掛けのソファに並んで座ると、肩と肩が少しだけ触れた。伝わる冷たくなった慎也の体に気がついた。


「わたしがあっためてあげるよ」


柄にもなく慎也に抱きついてみたりして、慎也の服に染みついた煙草の香りを思いっきり吸う。苦手な香りを吸い込んだことでわたしが「ケホ」とむせると慎也は「ばぁか」と言う。「重い」とかなんとか聞こえた気がしたような・・・気のせいだ、うん。

煙草の煙はあまりトクイじゃないけど、慎也の香りは大好き。煙草の煙はあまりトクイじゃないけど、慎也が煙草吸うところはカッコイイから好き。でもね、でもね慎也。


「あったまった?」
「全然」
「ふぬー」


慎也の胸に顔をうずめて、慎也の首に手を回して力強く抱きしめる。慎也は苦しそうに「う゛〜」と唸って、なんだかおかしかった。慎也の手はテレビのリモコンにあって、さっきからテレビのチャンネルがころころと変わっている。定まらないのは、珍しくわたしが抱きついたりしてどぎまぎしてるからですか?


「煙草吸いすぎて、わたしよりもずっと先に死んだりしないでね」
「死なねぇよ」
「そうだね。うん。そうに違いない」


パチンとテレビが消えて、リモコンにあった慎也の手がわたしの背中と頭に回る。ね、慎也。そろそろあったまったんじゃない?外にいて冷たかった慎也の体は少しずつポカポカしてきている。


「雪降ったらどうする?禁煙でもする?」
「その時考える」
「ふふ、わかった」

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