わたしの彼氏である真波山岳くんは女装がとても似合う。


「ねねね」
「なに?」
「これ、着てみない?」
「えっ!コレワンピースじゃん」
「いや!絶対似合う!むしろ山岳に似合わない服なんてない!!」
「本当に似合うと思う?」
「思います」
「じゃあ着てくるね〜」


山岳は女装が似合う。一見華奢だからどんな服でも似合う上に山岳はとってもキュートで女の子顔負けの可愛さなんだ。そんな山岳が着るんだ似合わないはずがない。

体育祭で山岳がチアリーダーのカッコしてたのが悪い。あれが悪い。あれさえなければわたしは山岳を好きになることはなかっただろう。体育祭でチアリーダーのカッコした山岳がポンポン振ってるところを見てしまったわたしは一目惚れをした。男の子なのに女の子のカッコが似合っちゃうところに惚れた。気がつけばわたしはポンポンを振っていた山岳の手を掴んで告白をしていた。


「アナタが好きです!名前も知らないけど好きになってしまいました!女の子のカッコが似合ってるところに惚れてしまいました!わたしとお付き合いしてください!」


たくさんの生徒が見ているなんてこと、頭からすっぽりと抜け落ちていた。いま告白しないとわたしはきっとずっと後悔する。直感で、そう思った。目をぱちくりさせていた山岳だったけど、わたしの手を握り返して「面白そうだね!お付き合いしよう!」ととびきりの笑顔をくれた。


それからというものの、お付き合いは順調に進んで、チューをした。その時の山岳はわたしの制服を着ていて、とても似合っていたことを覚えている。山岳は女装がとても似合う。嫌な顔一つせずむしろノリノリで女の子の服を着ちゃうそんな山岳がわたしはとても好きだった。


でも山岳は ちゃんと 男の子なのだ。



「ねぇ、真帆」



その日の山岳は、わたしがお願いしたワンピースは身につけてはいなかった。だらしなく開いた制服のボタンから山岳の引き締まった体が見え隠れして、わたしは思わず両手で顔を覆った。恥ずかしくて山岳のことが見られない。



「真帆が好きなのは 女装したオレなの?」



そんなの無意味で、いとも簡単に、山岳の手によって、わたしの手は顔からはがれてしまう。きゅうと指と指をからませて、山岳はその手に口づける。こんな山岳、見たことない。男の子だって知っていたのに、簡単に山岳の力に負けてしまうなんて。想像してなかった。切なげに山岳は眉を下げて、わたしの目を控えめに見つめる。


分かっていなかった
わたしはわかっていなかった
山岳はちゃんと 男の子なんだ

わたしの力なんて敵うはずがない。
山岳は女の子のカッコが本当によく似合うけど、筋肉だってついてて、華奢に見えるけど、意外にしっかりしてる。



「どんな山岳も わたしは好きだよ」


きっかけは何であれ、わたしは山岳が好きなのだ。女装をしていようがしていなかろうが、山岳が好きなのだ。



この時初めて
男の子の山岳と キスをした。



「オレ、真帆が好きなのは女装したオレで 本当のオレじゃないのかなって 不安だったんだ」
「ごめんね」
「でも女装するのは嫌いじゃないよ」
「えっ」
「でも、ほどほどにしてね」
「うん」
「じゃあワンピース着てくる」
「えぇ!?」
「ダメなの?」
「ダメじゃない!」
「あ」
「なに?」
「真帆があのワンピース着てよ」
「ええええムリムリムリムリ」
「真帆がワンピース着てくれたらオレ嬉しい」
「無理だって」
「・・・今日は止めておこっか」
「そうしようよ」
「真帆がワンピース着たら我慢できる自信ないもん」
「我慢?なんの?」
「ちゅーだけじゃ我慢できませんってこと!」
「!!!」

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