花宮くんはわたしだけに優しい。


溜めに溜めた課題をこなすことができず、教室で一人頭を抱えていると、隣の席の花宮くんはいつも通りガタンと鞄を机の上に置いて、静かに椅子に座り足を組んで何かの本をパラパラと捲っているようだ。この時の花宮くんはすごく静かで、怖くない。泣きべそをかきながら花宮くんの方を見ると、「俺の顔になんかついてる?」とわたしの方を見ずに静かに言った。バスケ部のみんなと居る時は「バァカ」とか言って舌べーって出して悪い顔してるのに、二人っきりになると優しいんだよなぁ。さすがわたしの彼氏だなぁ。


「課題が、終わらなくて」
「だから先にさっさと終わらせろって言っただろーがばぁか」


そのばぁかはわたしの心に心地よく響く。あー花宮くんはずるいなぁ。言われてたけどさ、そうやって花宮くんにばぁかって言われるの、結構好きだから、つい馬鹿みたいなことやっちゃうんだよね。

花宮くんはやっと本から目を離してわたしのことを見て、言うのだ。


「今日部活オフだから課題見てやるよ」
「本当!?」
「内田んちでな」


そうだよね、学校とか必ず知り合いいるし、もしかしたら図書館にだって知り合い来るかもしれないもんね。花宮くんは恥ずかしがり屋なのかなんなのか、こうやって二人きりでいるところを誰にも見られたくないらしい。わたしと二人でいるときと、そうじゃないときじゃ全然違うもんね。そりゃ見られたくないわけだ。他の人と同じような態度をわたしにとったっていいのに。それくらいじゃ花宮くんを嫌いになんてならないよ。


「ありがとうね」
「ハイハイ、感謝してね」


こっそり口角をあげて笑う花宮くんの横で、わたしは涙をひっこめた。花宮くんがいたら百人力だもんね。


「ね、花宮くん」
「何?」
「今度わたしを罵って」
「ドMだったんだ。知らなかった」

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