おばあちゃんの畑でスイカが採れた。


「すごいスイカだね〜おっきい!」
「うん」
「で、なんで俺と渚が呼ばれたんだ?」
「いや、スイカ割りしようと思って」
「しようよスイカ割り!」


おばあちゃんちの庭で渚くんとマコちゃんとわたしで大きなスイカを囲む。おばあちゃんは居間に座って麦茶を飲みながらニコニコとわたしたちのことを見ている。渚くんとマコちゃんはおばあちゃんに「ありがとうございます!」とお礼をした。二人がたまたま家の前を通りかかったから呼んだだけで、誰だって良かったんだけど、仲のいい二人が通りかかってくれて良かったと思う。


「ここにバットがあります」
「ふむ」
「そしてここに手ぬぐいがあります」
「もしかして?」
「目隠しをします」
「いいね〜!誰からやる?真帆ちゃん?それともマコちゃん!?」
「ここはやっぱりマコちゃんじゃない」
「俺ェ!?」
「はい、目隠ししまーす」


わたしがマコちゃんに目隠しをするとマコちゃんは慌てて「見えない!見えないよ!」とわたわたした。それを見て渚くんとわたしは笑ってしまう。大きな体をしたマコちゃんが小さく見えるから。渚くんが「ハイ、これバットだよー」と言ってバットを手渡して、スイカから数メートル離れたところへマコちゃんを連れて行き、くるくると三回、マコちゃんの体を回した。わたしは縁側に腰をかけて、おばあちゃんの方を振り返る。おばあちゃん、なんだか嬉しそう。


「よし、スタート!」


渚くんが大きな声で言って、マコちゃんの背中を押した。マコちゃんはバットを弱々しく握りしめ、よたよたとスイカに向かって歩き出す。見当はずれな方向へ行ってはわたしと渚くんが「右右右!」とか「もうちょい左!」とか「そのまままっすぐ!」とか言って誘導するのに、マコちゃんはそのまま進むことができなくて、結局明後日の方向へ行ってしまい、「ここだ!」と叫びながらバットを振り落としたのに、そこにはスイカの姿はなかった。渚くんは手を叩いて笑って、わたしも涙が出るくらい笑う。マコちゃんの後にわたしと渚くんが挑戦したけど、結局スイカを割ることができずに、おばあちゃんにスイカを切ってもらうことになったのだ。縁側に三人並んで座って、スイカを口に含んではププッと種を庭に向けて吹き出す。


「夏だね〜」
「そうだな、今年は一段と暑い気がする」
「岩鳶に帰って来れて良かったよ」
「うん、おかえり真帆ちゃん」
「真帆、おかえり」


口から自然と「帰って来れて」と言う言葉が出て、わたしは驚いた。やっぱりわたしの帰って来るところは岩鳶なのかもしれない。二人は口の周りをスイカだらけにして、わたしにおかえりを言う。二人の事、変わってないなと思っていたけど、やっぱり大人になったよ。わたしも同じくらい、大人になっているのだろうか。空がどんどん赤く染まって行く。じきに夕日も沈むだろう。夕焼けに染まる空を見るために遮るものが何もない。蝉のシャワシャワと鳴く音と、風鈴のチリリンと鳴る音が、耳に心地よかった。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -