いつも通りの昼休み。日課であるぐんぐんヨーグルトを買いにいつもの自動販売機を訪れた。入学してからいつもこの自動販売機でぐんぐんヨーグルを買っていたけど、生まれて初めてアタリを引いた。


「アタリ付きだったのか、この自販機・・・」


アタリ付きだとは知らずに今までここでぐんぐんヨーグルを買っていた。というかアタリ付きって本当に当たるんだな・・・。そうこう考えているうちに自動販売機から流れ出す変な音楽は止まり、ガラガラガシャンともう一本ジュースが出てきたではないか。まずはぐんぐんヨーグルを取り出し、アタリで出てきたジュースを取り出す。


「・・・イチゴミルク・・・」


正直、いらない。どうせならぐんぐんヨーグルがもう一本だったらよかったのに。イチゴミルクを手に取ったは良いものの、どうしようかと悩んでしまう。イチゴミルクなんて飲みたくないし、だからと言って捨てるのは忍びない。眉間に皺を寄せて悩んだ。


「・・・日向にやるか」


思い立って日向のクラスへ行こうと振り返る。


「わっ」
「エッ」


俺のすぐ後ろに誰かがいたなんて気がつかなかった。振り返った俺は後ろに立っていた人物にぶつかってしまう。目の前には尻もちをついた女子生徒がいて、「いててて」と言いながら立ち上がった。


「ごめん、大丈夫か?」


こういうときは俺が手を指しのばして立ちあがせるべきだったのだろうが、時すでに遅し、彼女は立ち上がり手でスカートについた埃を落とした。それから俺の顔を見て「大丈夫だよ!」と笑った。


なに この笑顔


「これ、やるよ」


片手に持っていたアタリのイチゴミルクを差し出すと彼女は困った顔をして「いやいや、悪いよ」と言った。悪いも何もこれはアタリで出てきたジュースであり、棚から牡丹餅的なものであり、これを彼女に挙げても痛くもかゆくもないので、


「受け取って」


半ば強引に彼女の手に押し付けた。
押し付けたときに触れた指先が、手が、熱くなって、あっという間に全身に熱が回ってしまった。そんな自分がなんだか恥ずかしくて、その場を走って逃げた。

もしかしたら彼女はイチゴミルクが嫌いだったのかもしれない。
でもその時の俺は、あのイチゴミルクをあげたらきっと彼女は喜ぶだろうと思っていたんだ。


「・・・名前、聞いておけばよかった」


後悔しても、もう遅いけど。同じ学校なんだし、ひょんなことで再会することだってあるだろう。


あの笑顔をもう一度見たいと思うのは、それは恋の始まりなのかどうか、俺はまだ知らない。

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