読み切った本を返しに行くのと、新しく本を借りるために図書館へ行くと、渚くんがスポーツ科学の棚のところにいて、すごく真剣な顔をして本とにらめっこをしていた。あまりの真剣さに声をかけずにいると、


「酷いなぁ真帆ちゃん」


と、本から目をそむけずに、わたしの名前を呼んだ。ええ、気がついていたのか。気がついてるのなら最初から言ってくれたらいいのに。渚くんの隣に立つと、渚くんは笑って「そんなに見つめてくれるなら、最初から声をかけてくれたらいいのに」と言った。「渚くんこそ、わたしに気がついてるなら最初から言ってくれたらいいのに」ちらりと渚くんが手に持っている本を見ると、水泳の事の本ばかりだった。


「渚くんって何気にまじめだよね」
「何気にって、酷いよ真帆ちゃん」
「ごめんごめん」
「真帆ちゃんはどんな本読んでるの?」
「この前借りたのはミステリ。次は料理の本借りようかなーと」
「ジャンル全然違うじゃん」
「うん。料理してみようかなーと思って」
「そうなんだ。今度食べさせてね」
「わかった。今日は部活休みなの?」
「うん。休み。やることなくて図書館来たんだ」
「ほーお、課題終わったんだ」
「うっ、思い出させないで〜」


へなへなと体の力を抜かせて渚くんは落ち込んだポーズをとる。この様子じゃ全然宿題終わってないんだろうなぁ。早く終わらせちゃえば後が楽なのに。


「・・・真帆ちゃんは課題終わらせたみたいだね」
「うん。早々に」
「真帆ちゃんお願い!僕に勉強を教えて!」
「しーっ!ここ図書館!」
「あっ、ごめんなさい・・・」
「課題持ってきてるの?」
「うん」
「じゃあ教えてあげよう。自習室行こうか」
「さすが真帆ちゃん。センパイみたいだ〜」
「なんかすごく馬鹿にされてる気分」
「馬鹿になんてしてないよ〜!」
「わかってるよ」
「ありがとう!」
「いえいえ、この間のアイスのお礼」
「真帆ちゃん大好き!」
「わたしも渚くん大好きだよ〜」


弟がいたら、こんな感じなのかなぁ。

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