目が覚めたらまだ5時で、もう一度目を閉じた。それなのにやってくることのない眠気にわたしは頭を悩ます。もう一度時計を見る。五時半。・・・仕方ない、起きよう。おばあちゃんはこの時間帯畑に行ってるからいないでしょ。お腹すいちゃったなぁ。冷蔵庫を開けるとキュウリが山ほどあって、わたしはそこから一本取り出し、塩で洗った。味噌をつけて食べる。美味しい。美味しすぎる。これぞ夏の味覚。


「ラジオ体操って、まだやってるのかな」


小学生の頃、毎朝六時から近所の神社でラジオ体操をしていた。スタンプカードにスタンプ押してもらって、何個溜まると景品がもらえるとかそんなの。まだやっているかどうか気になってキュウリをほおばりながらそのラジオ体操が行われていた神社を目指す。歩いているとわたしの後ろから小学生が走って来て、わたしを追い越して行く。これはもしかしてもしかしなくてもラジオ体操あるんじゃない・・・!?はやる気持ちを抑えることができず、わたしもその小学生たちのように走って後を追いかけた。後をついて行くと懐かしい神社にたどり着き、小学生やその保護者達がラジオ体操が始まるのを待っていた。小学生たちは元気そのものだけど、保護者達は眠たそうに欠伸をしている。・・・ラジオ体操すっかり忘れてるんだけどわたし。どうしようかなぁ。


「珍しいな、真帆がいるなんて。おはよう」
「マコちゃんだ。おはよー」
「真帆もラジオ体操しに来たんだ」
「なんか目が覚めちゃってさ」
「俺も!だからたまーにこうして妹と弟ラジオ体操しに来るんだ」
「そういえば妹弟いたんだっけ」
「うん、長男」
「ラジオ体操、変わらずにここでやってるとは思わなかったよー」
「もう高校生だからスタンプカードはないけどね」
「あはは、やっぱりそうだよね。小学生限定だ」


そんなことを喋っているとラジオ体操第一ー!という音声とともに、あの懐かしい音楽が流れる。マコちゃんは間違うことなく完璧にラジオ体操をやりきり、わたしがどうだったっけ、こうだっけ、とわたわたしているのを盗み見てはふふっと笑う。ヒドイ。ラジオ体操が終わり、スタンプを押してもらおうと小学生の長蛇の列ができている。わたしも数年前はあそこに並んでいたんだなぁと思い出すと、胸の奥がきゅうんとなった。そしたらぐーとお腹が鳴った。それはマコちゃんも同じようで、「お腹、空いたね」と言った。キュウリ一本じゃ足りないや。小学生たちよりも一足先に神社を出る。マコちゃんは背が高いから歩幅がわたしよりも大きい。それなのにわたしに合わせて歩いてくれることが嬉しかった。おばあちゃんちにつくと、おばあちゃんはもう帰って来たようで、朝ご飯をつくって待っていてくれたようだ。マコちゃんの姿を見るなり、あらあら、もう一人分作らなくちゃね、と言って、台所へ消えて行く。


「食べてく?朝ご飯」
「お邪魔しようかな」
「うん。どうぞ。おばあちゃんのご飯、美味しいよ」
「うん、知ってる」

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