「しゅーうーちゃーん」
「なんだよ」

サル山大将のしゅうちゃんは高校生になったらいきなりモテはじめてしまいました。大将の性格が、どうやらクールに見えるらしいです。ずっとずっと片思いのわたしは焦ります。いつしゅうちゃんが彼女作るか、気になってしょうがないのです。告白しよう!と何度誓ったことだろう。一度も気持ちを伝えたことはありません。ちんちくりんの赤ちゃんのころから一緒にいるのにタイミングなんてつかめないんです。もしかしたらタイミングなんてないのかもしれません。いくら好き同士でも、結ばれない運命ならタイミングなんて来ないんじゃないでしょうか。(それ以前にしゅうちゃんはきっとわたしのことなんて好きじゃない)(・・悲しいなあ)

彼氏のいるユキちゃんは 付き合うまでが楽しいんだよ! って言うけれど、わたしは楽しんで恋ができません。しょうちゃんを想って泣く夜なんてほとんどまいにちだし、可愛い子とお話してるの見るだけでずきずき心臓痛くなるしで楽しめません。しゅうちゃんはわたしのことをどう思っているのでしょうか。気になるのに聞けません。ただの幼馴染なのでしょうか。怖くて聞けないのです。

二人きりのしゅうちゃんの部屋。きっとどきどきしているのはわたしだけで、しゅうちゃんは野球のことを考えているでしょう。もしかしたら好きな子のこと考えていたりするのかな。そんなの想像するだけで嫌です。しゅうちゃんの横にわたしじゃない誰かがいるのが嫌。想像するだけで発狂しそうです。こんなに好きなんだから、言わなくても伝わってしまいそうな感じもしますが、伝わっていないのです。気持ちは言わないとわからないのです。相手の気持ちを知ることはとても怖い。自分が弱いから、とかそういうのじゃなくて、

「おい、さっきから鉛筆動いてないぞ」
「うー・・・」

しゅうちゃんにお勉強を教えてもらっているのでした。夏休みの課題が手つかずなので、数学得意なしゅうちゃんにいろいろ聞いていたのですが、勉強に身が入りません。しゅうちゃんがそこにいるだけでどきどきして、しゅうちゃんのことが気になって気になってしょうがないのに、勉強なんてできっこないのです。しゅうちゃんはわたしのことおかまいなしに野球の本を読み始めダンベルで腕を鍛えています。数学の課題はもう終わっているらしい。

「どうしたんだよ、真帆最近変だぞ?風邪か?」
「ちがうよ、風邪なんかじゃない」

最近じゃなくてもっとずっと前からわたしおかしいんです。しゅうちゃんのことをすきだと気づいたときからわたしおかしいんです。しゅうちゃん見るだけで胸がいっぱいなんです。しゅうちゃんとお話するだけで頭まっしろになっちゃうんです。しゅうちゃんと二人きりでいるだけで心臓とまってしまいそうなんです。しゅうちゃんがすきなんです。しゅうちゃんがだいすきなんです。ほんとうにだいすき なんです。

「だめだもう」
「早くしろ勉強しろって」
「もうだめだ」

しゅうちゃんの部屋にある平机につっぷす。だめだもう。ほんとうにだめだ。手にも足にも力が入りません。しゅうちゃんのせいです。いやいやわたしのせいですどっちのせいなのでしょうか。

「相談なら乗るぞ!」

そうやって真剣な顔されてもさぁ、
しゅうちゃんに相談なんてできません。涙がぼたぼたと、課題のプリントにしみこんでゆきます。こんなプリント、提出できません。あきらめよう。数学。数学はあきらめる、あきらめるけどしゅうちゃんは諦められません。

「しゅうちゃんが すき  だいすき」

鼻水がタラーっときてるのがわかる。涙が頬を伝うのが分かる。今相当わたしは変な顔をしていることでしょう。タイミングなんてもうどうでもいいんです。運命とかなにそれおいしいんですか。わたしがしゅうちゃんをすき、こわくたってしゅうちゃんがすき、それだけあれば、いいんじゃないでしょうか。

「とりあえず鼻拭けよ。話はそれからだ」

鼻を拭く前にキスをされました、これってどういうことでしょうか。

・・・しょっぱいよ

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