「明日、飯食い行くぞ」 「え、ほんと?!」 「おう」 仕事から帰ってきたタカヤはネクタイを外しながらわたしに言った。それが機嫌取りでも別にかまわない。でもタカヤからお食事に誘われるなんて久しぶりなもんだから、急いでクローゼットの中身をあさった。 どこに行くのか、なにを食べるのかはまだわからないし、タカヤに聞こうともおもっていない。その心意気が嬉しい。せっかくなんだから、おしゃれしたいし、ここのところずっとスッピンだったし、ちゃんとメイクしたい。 「さて、行くか」 わたしは思いっきりおしゃれして、きっちりメイクして、髪の毛も整えた。タカヤはというと、いつもと変わらない格好。ポロシャツにデニム。似合わないってコトもないけど、もうちょっとおしゃれしてほしいなあ。 「どこ行くの?」 「え?ラーメン屋」 ちょ、ちょっとまって。 「お洒落なカフェは?高級レストランは!?」 「そんなもん誰が行くか」 「せっかくお洒落したのにー!」 「なんだ、真帆はそんなの期待してたのか?」 「・・・もう!」 カンカンカン、とアパートの階段を降り、自転車置き場のところでタカヤが通勤用に使っているママチャリを引いてきた。 「どーぞ」 にや、と笑い、タカヤは自転車にまたがった。まとめた髪の毛を解いて荷台に座った。ラーメン屋さんに行くなんて久しぶりだし、ラーメン好きだし。餃子も食べたい。タカヤの後ろに乗るのはどれくらいぶりだろう。 「どーも」 自転車は頼りなく走り出して、一漕ぎ、二漕ぎとタカヤはペダルを踏み込む。 「どこのラーメン屋さんー?」 わたしは嬉しくなって、弾んだ声でタカヤに話しかけた。 |