午前様はよくある。残業した分きっちり残業代出ればいいけど、そんなことはない。こんな仕事やめてやると思いながら仕事をこなして、家につけばもう日付はとっくにまたいでいた。

「ただいま」

もう寝ていると思っていたけれど、部屋の明かりが廊下に漏れている。もしかしたら真帆はまだ起きているのかもしれない。くたくたになった鞄を廊下に下し、ネクタイを外しながらドアを開いた。つけっぱなしのテレビからは深夜番組が流れている。ちかちかと瞬いている電球。テーブルに突っ伏したまま、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てている、真帆。その髪をくしゃ、となでると、口元をにやけさせて、「へへへ」と寝言を言った。どうやら幸せそうな夢を見ているらしい。

「こんなとこで寝てたら風邪ひくダロォ・・・」

なんて叱っても聞こえるはずない。

二人暮らし、二人きり。そんなことは今に始まったことじゃないけど、俺の帰りが遅かったり、休みなんてあってないようなもので、二人の時間は取れてない。だからいろいろご無沙汰だけど、ヤリたいけど、正直今の俺にそんな体力があるわけがなく・・・。シたいんだがなー・・・時間と体力が。つーか最後にキスしたのいつだ?それすら覚えてない。これ付き合ってるって言える?同棲してるって言える?同棲してる意味、ある?

誰もいないのに、本当に誰もいないか、どこかで誰かが見てないか、俺はキョロキョロしてチェックをした。うんうん、今ならだれもいない。するなら、今のうち。

すやすやと眠りについている真帆のほっぺに唇を近づける。ちゅ、と小さな音を立ててキスをすると、真帆は目をカッと開いて

「何今の!ねぇ、今の何!!」

と俺の体を揺さぶった。

「起きてたのかヨ・・・」
「そういうの、ちゃんとわたしが眼覚めてるときにしてくれない?夢なのか現実なのかわかんないじゃん」
「夢じゃネェヨ」
「じゃあもう一回」
「恥ずかしいからヤダ」

しばらくしてなかったから、こうやって普通のキスすんの、すっげぇ照れくさいじゃん。口元を手で押さえてそっぽを向くと、真帆はその手の上からキスをしてきて、「恥ずかしくてもいいの、好きだから、ヤスくんに触れていたいの」と俺の目を捕らえて言った。あ、体力ないとか思ってたけど、そんなことなさそうだ。真帆の体をひょいと持ち上げて、そのまま寝室へ向かう。

「え、まって、ヤスくん」
「恥ずかしくてもいいんだろ?」
「待って、テレビ消してないし、電気も」
「もう待てない」

恥ずかしくてもいいんだ。俺も真帆が好きだから。

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