スーパーに寄ったら出入り口にどーんと柚子とかぼちゃの売り場があって、はてなんだろう?と首をかしげたら、隣にやってきたミセスが「あら、今日は冬至だったわね、忘れてた」と言った。そうか、冬至。一年で一番夜が長い日。四分の一にカットされたかぼちゃと、柚子を二つ買い物かごに入れて、わたしはほかの売り場へ向かう。ありがとうミセス。わたしもすっかり冬至のことを忘れていた。むしろヤスくんと一緒に住み始めてから、冬至の日に柚子湯に入ったり、かぼちゃ食べたりって、したことないかも。 家について一番にお風呂掃除をする。柚子を二つポーンとバスタブに入れて、お湯を貯める。次はかぼちゃだ。味付けが難しいから、かぼちゃの煮物はそんなに作らないんだけど、こんなときくらいしかやろうとは思えないし。あとはおととい仕込んだ豚ロースの粕漬け。キャベツの千切りを付け合わせにして、あとは朝の残りのお豆腐の味噌汁。これだけじゃヤスくん寂しいかな?今豚肉焼いたら早いかもしれないし、もうちょっと待っていよう。キャベツの千切りを水につけて、時計を見た。そろそろ帰ってきていい時間だと思うなあ。あーかぼちゃが甘く煮える、いい香りだ。 「ただいまァ」 がちゃり、というドアの開く音と一緒に、ヤスくんが帰ってきた。ヤスくん独特のスリッパを引きずる音。きっとまた姿勢悪くして歩いてるんだろうなあ。 「なんか、めっちゃいい匂いすんだけど」 「おかえり。かぼちゃ煮てるの」 「まじで?」 「うん。珍しいでしょ」 「珍しい」 「先お風呂にする?」 「んーそうしよっかなぁ」 「どれくらいで出る?」 わたしが聞くとヤスくんは「30分くらいかなァ」と言いながらネクタイを解いた。背広をハンガーにかけて、スラックスを脱いだ。ワイシャツに靴下という変な格好のヤスくんはもう見慣れた。「じゃあそれくらいにご飯できるようにしとくね」と答えると「んー」と言いながらヤスくんはバスルームへ向かった。じゃあお肉でも焼こうかなと、冷蔵庫から豚肉を取り出そうとすると 「ちょ!!真帆ちゃん!!来てヨ!」 いきなりヤスくんに大声で呼ばれたから、何事かと思って急いでバスルームへ行くと、ヤスくんは小さい目をきらきらさせながら、「柚子!柚子入ってンだけど!!」と、すっぽんぽんのマヌケな姿で、言った。 「今日冬至なんだって」 「あーソッカァ」 「ごゆっくりどうぞ」 「…なァ」 「ん?」 「せっかくだし、二人で入ろーヨ」 少し顔を赤くさせながら、目をそらしてヤスくんは言うもんだから、 「そーね、せっかくの柚子湯だし」と答えた。ヤスくんは嬉しそうに、「ヨッシャ!」と言って、バスタブにどぼーんと飛び込んだ。そーね、まず、ガス止めてこないとね。 「真帆〜〜はやく〜〜〜」 「焦らなくても夜長いんだから大丈夫だよ」 「なんかエッチだね、ソレ」 |