変だな?と思ったのは、好きな映画が金ローで放送されるから録画しようとしたときだ。番組表の文字がぼやけて、どこに金ローがあるか分からなかった。しぱしぱと数回まばたきをするとすぐに見つけられて、気のせいかな?と録画ボタンを押す。

「DVD買ったらいいのに」

録画予約をしていた俺を見て、真帆は言った。

「高いからイイの」

俺今、絶賛節約中だからネ。
テレビを消して、風呂場へ向かう。途中振り返って「あ、たまには一緒に入る?」なんて冗談交じりに誘うと、「そうしようかな」って乗ってこられるもんだから、付き合い長くてトキメキが薄れてきたかなとか思ってたけど、心臓が熱くなった。

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次の休みの日、録画しておいた金ローを再生する。吹き替えだったのを変換して、日本語字幕を表示させる。画面の下に流れる文字が滲んではっきり読めなかった。眉間に皺を寄せて目を細めるとようやく文字が読めるようになった。疲れてンのかな、と目頭を指先でマッサージする。

「さっきものすごく人相悪かったよ」
「ウッセ、」
「コーヒー淹れたから一緒に映画見よう」
「…オウ」

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月曜提出の報告書があったことをすっかり忘れていた俺は、ノートパソコンを起動させて報告書を作ることにした。ワードを立ち上げて文字を入力していく。途中、また視界がぼやけてきて、目を擦った。

この間の違和感は、気のせいではなく、

(もしかして俺、目が悪くなってる?)


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たまには二人でメシでも食いに行こうと、仕事後外で待ち合わせをした。報告書を提出し、上司のお小言を聞いていたら待ち合わせの時間よりもつくのが遅くなってしまった。今日の真帆はどんな服を着てたっけ、と頭を悩ますが思い出せない。まぁ、顔見たらわかるダロ。

キョロキョロと辺りを見回すが、人の顔がぼやけてよく見えない。少し離れたところで、誰かが俺のことをじっと見ていた。背格好からして、きっと真帆と思うんだけど、顔が見えない。今アイツが、俺が遅刻して怒ってるのか、それとも何事もなくちゃんと待ち合わせに来て安心してるのか、俺には分からなかった。


「クソ、」


ゴシゴシと強く目を擦る。まばたきを繰り返す。でも見えない。少し前までははっきり見えたはずなのに。

近づいてようやく、真帆が今どんな顔をしているのか、見ることができた。


「遅くなって悪ィ」
「ヤスくんのことだから遅れて来るんじゃないかなーって思ってたよ」
「ナァ、」
「なに?」
「眼鏡屋寄ってもいい?」

真帆の顔が見えないことが、こんなにも不安になるだなんて、思いもしなかった。


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「ヤスくん眼鏡似合ってるよ」
「デショ?」
「似合ってる」

笑う真帆が、ちゃんと見える。

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