思い出してみると、喧嘩ばかりしていた。


「結婚式のウエルカムボードどうする?」
「愛車並べようヨ」
「ヤスくんのビアンキしかないじゃん」
「じゃあビアンキ二人乗りして写真撮る?」
「わたしどこに座ればいいの」
「どこだろ」
「・・・こんなことになるんだったら付き合ってる時に写真いっぱい撮っておくんだったね」
「ヤァダヨ」
「・・・もう」


デジカメのSDの中にも、スマホのカメラロールにもヤスくんが写ってる写真は殆どない。二人で旅行に行ってもヤスくんはわたしのことを写真に撮るばかりで、ヤスくんが被写体になることは全くと言っていいほどなかった。ゆえに二人で並んだ写真なんてなくて、今こうやって頭を悩ませているのだ。


「もういっそ、ウエルカムボードなんて無くてもいいんジャネ?」
「ええええええ!」
「ウエルカムチャリ」
「・・・わたしにロードバイクを買えと言うのですか」
「結婚式あげるんだもんね、俺達ビンボーだもんネ」
「そうだよ」
「・・・参ったナァ・・・」


せっかく結婚式を挙げるんだから、来てくれる人たちには楽しんでもらいたい。だからウエルカムボードだって気合を入れて作りたいんだ。


「ちょっとロードバイク 二人乗りでググるわ」
「あるかなぁ?」
「ンー・・・あった」
「本当!?」
「ホラ」


わたしにスマホを見せながら、この写真に写ってる選手は有名な選手の誰々で、2ケツしてる相手はその人の奥さんで〜とか事細かに説明してくれている。仲睦まじい姿。美男美女。


「わたしこの奥さん程美人じゃないし、細くもないよ」
「俺だってこの選手程マッチョじゃないし、イケメンでもないよ」


まあね、わたし達ですし。


「・・・ま、俺に言わせてみれば真帆は世界一美人なんですケド、ネ」
「・・・ばか」


柄にもないこと言われて照れてしまう。のは、わたしだけじゃなかったみたいで、ヤスくんもスマホから目を離さず、わたしのことを見てくれない。あーもう。確かにヤスくんは目つき悪いしガリガリだし、ちょっと怖いけど、それでも世界一のわたしの旦那さんなんだ。


「誰かに頼むか、二人で乗ってるとこの写真撮ってもらおーヨ」
「・・・非力なヤスくんに二人乗りなんてできる?」
「非力とはシツレーだナァ?」
「あはは、ごめんって」


まだまだ先の結婚式、大変そうだけど、二人なら大丈夫だよね。これから先に待ちかまえている困難も、二人なら乗り越えていけるよね。


「金城あたりならやってくれそうじゃナァイ?」
「金城くんかぁ」
「電話してみる」
「うん」


二人なら大丈夫。そう思える人だから。


「・・・幸せそーなカオ」
「まあ、ヤスくんと一緒ですから」

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