「リヴァイさん・・・大丈夫ですか?」
「・・・水」


喉が渇いて目が覚めた。


「ハイ!今すぐ!!」


慌ててキッチンへ走る女の背中を見て、もう一度目を閉じる。あれ、どうして俺は倒れているんだ。思いだせない。ばたばたと慌ただしく女は戻ってきてボトルに入った水を俺に飲ますべく、俺の体を起こそうとした。


「自分でできる・・・」


女の手を払いのけて立ち上がる。足もとが覚束なく、ふらふらとしてしまう。頭ががんがんうるさい。鼻は詰まっているし、目を開けるのが面倒だ。視界の端で女が不安そうな顔をしているのが写った。女がおずおずとボトルを俺に差し出し、ひったくるようにして水を受け取った。ああ、かっこ悪い、俺。こんなところ女に見せたことないのに。


「リヴァイさん・・・お酒飲んできたんですか?」
「は?酒・・・?」


ごくりと喉を鳴らして水を一口飲み込む。水が喉から胃、全身に回ったようで、ぼやーとしていた記憶がクリアになって行くのが分かった。ああ、そう言えば明日は特に予定が入っていなかったから調査兵団の仲間とバルに行ってたんだ。俺の周りは酒に強い奴らばかりで、自分のペースで飲めずにいた。しかも色んな酒を手当たり次第に飲んでいたから酔いは回るわけだ。明日絶対二日酔い、だ。情けないことに。


「気持ち悪くないですか?大丈夫ですか?お風呂入れそうですか?」
「大丈夫だ、構うな」
「でも、」
「大丈夫だって言ってんだろ」


女がビクリと肩を震わせる。また言いすぎた。俺が悪かったと謝る前に女は大きく頭を下げて、「ごめんなさい」と小さな声で言った。あークソ。


「水、助かった」
「・・・リヴァイさん」
「・・・なんだ」
「リヴァイさん、辛いことがあったらわたしに甘えてください」


女は「いつもわたしはリヴァイさんに甘えているから」と続けて言った。頭を下げたままでいるから女がどんな表情をしているかはわからない。


「ああ」


口でそうは言ったもの。俺は女に甘える気は更々ない。それは女も分かっていることだろう。


「二日酔いにならないように、いっぱいお水飲んでくださいね」


やっと頭をあげて女は言う。その表情はどこか嬉しそうで、さっき分かっているだろうって思っていたけど、やっぱり分かってないんじゃないかと思った。甘えられるつもりでいるんじゃないか。できるか、そんなこと。


一人で生きていた方が楽だった。
誰かと関わって生きていくのは、ずっとずっと難しいことだ。
死に枷ができてしまう。


出会わなければ良かったと、少しずつ思い始めた。

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