「リヴァイさんって実は何でも出来ますよね」
「は?」
「ごめんなさい」


失礼なことを言ったと思ったのか、女は急に俺に謝って縮こまった。一緒に生活するようになって慣れてきたと感じていたんだが、まだこんな風に俺に気を使ったりすることが多々ある。気を使うと言うより、俺がいまだに怖いのか。・・・目つきは悪いけどそこまで怖がることはないと思う。手に持ったティーカップをテーブルに置くと女は「あ、お代りですか?」と俺に聞いてきた。「いや、いらない」と答えると女はまた小さくなった。


「なんでそう思うんだ」
「・・・怒りませんか?」
「怒らない」
「絶対怒りそう」
「怒らないって言ってんだろ・・・」


つい眉間に皺が寄ってしまう。人差し指を押し当ててその皺を伸ばすと女がぷっと吹き出した。失礼なヤツだと俺は思う。女は自分のティーカップに口をつけて、喉を潤してから口を開いた。


「掃除も上手で、料理も美味しくて、なんでもできるじゃないですか」
「掃除も料理もできて当然だろうが」
「そ、そうですけど」
「美緒は掃除ヘタクソだけどな」
「うっ、ごめんなさい」
「早く上達しろ」
「精進します」


掃除と料理だけでなんでもできるっておかしくないか。


「ここに来る前は一人で暮らしてたんだろ?お前こそなんでもできるんじゃねぇのか?」
「できるっちゃできますけど、ここにはリヴァイさんがいるから」


それこそ鳥を捌いたり、作物を育てたり、美緒の方が何でもできるはずだ。


「甘えたいと思います」


女はふんわりと笑う。
ああ、こいつは今まで誰にも甘えずに生きていたのか、と少しだけ胸が痛くなった。甘えられるのは悪くない。悪くない、が・・・


「掃除くらいできるようになれ」
「リヴァイさんが奇麗好きすぎるんですー」
「・・・タダ飯食らいが、甘ったれんじゃねぇ」
「ごめんなさい」


言いすぎた、と後で気がつくのはいつも女が謝ってからで、


「掃除も頑張ります」
「そうしろ」


後悔したって、いつも一歩遅いんだ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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