「久々にデートしようよ」

徹にそう言われて、そういえばデートというデートを最近していないことにやっと気がついたのだ。ちょっと前までのわたしは、デートに着て行く服がなかったりと女子としていろんな意味で枯れていたわけだけど、彼氏ができると変わるもんだ。わたしの部屋のクローゼットにはそれなりの服がきちんと入っていて、いきなりデートに誘われてもちゃんと対応できるようになっている。

「じゃあ着替えたりなんだりしなくちゃだから、一回部屋戻るね」

徹が作ってくれた焼きそばを食べ終えて、お皿を洗う。その間徹は散らかしたガス台の周りをきれいに掃除していて、二人で並んだキッチンの狭さにすこしだけ笑う。

「そしたら1時に駅前集合ね」
「え、待ち合わせするの?」
「うん」

隣に住んでるのに、わざわざ待ち合わせ場所を決めるなんて。

「こうでもしないと、デートっぽくないでしょ」
「なるほど」

お隣さんになってからというもの、こういうデートってしたことなかったかもしれない。





待ち合わせ時間のすこし前に着くと、そこにはすでに徹が待っていた。わたしの姿を見つけるなり大きく手を振っている。小走りで近づいて「恥ずかしいからやめて!」というと、あくびれもせず「いいじゃん、別に」と唇を尖らせた。

なんども徹の私服は見てはいるけど、背が高い分、なに着ても格好良く見えるからずるい。

デートといっても、わたし自身やりたいことはほとんどなくて、徹が映画見たいと言えばついてって、公開したばかりの洋画を見たり、ボーリングしたいと言われればボーリング場へ行きヘトヘトになるまでボーリングをし、お茶をしたいと言われれば、最近出来たばかりのカフェへ連れて行ったりした。そんなこんなをしていると日がすっかり暮れていて、街灯がチラホラと点き始めた。ボーリングのし過ぎで腕と肩が痛い。徹はケロリとしていて、これが若さか、なんて絶望したくなる。お腹はぺこぺこだし、久々に遊んだからとても疲れた。だけど洋画見ながらうるうるしてる徹とか、ストライクとって嬉しそうにニヤニヤしてる徹とか、ラテアートの模様をキラキラした瞳で見つめる徹とか、いろんな徹のことが見れたから。だからこんな疲れも悪くないかなって思ってしまう。

もうすぐ晩御飯の時間だ。外で食べるのかと思いきや、徹は「真子さんの手料理が食べたい」と言って、わたしの手を取りスーパーへ向かった。近所のなんの変哲もないスーパーで並んでものを見てると、

「なんか、結婚してるみたいだね〜?俺たち」
「えっ?!は、えぇ…」

同じこと考えてた、なんて恥ずかしくて言えるわけない。

「…徹はなに食べたい?」
「豚カツ!あーハンバーグ!いや、唐揚げ…」
「お子様か」
「子供扱いしないでよ」
「してないって」
「楽しみだなぁ、真子さんの手料理」
「いつも食べてるのに、よく言うよ」
「楽しみだなぁ」

些細なことだけど、こんな風に買い物かごを持ってくれたり、とか。一緒に食材選んでくれたり、とか。そんな当たり前のようなことが、徹と二人だと、なんだか、とっても

「しあわせだなぁ」


幸せなんだ。

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