カーテンの隙間から入り込んでくる朝日で目が覚めた。隣にはすやすやと寝息を立てている徹。見慣れない部屋。ここが徹の部屋だと気がつくのにしばらく時間がかかった。今何時だろう。そう思って時計に目をやる。時計の針は8を指していた。遅刻だ、と思うのと同時に今日は土曜日だったと思い出す。ほっと胸をなでおろして、ベッドにもぐりこみもう一度目を閉じた。何か大事な事を忘れている気がする。

徹の寝息が規則正しいから、わたしはすっかり安心してしまって、何かを忘れて、また眠りについた。

次に目が覚めた時、隣に徹の姿はなく、代わりに美味しそうな匂いが部屋を満たしていた。あの徹がキッチンに立っている・・・!?いつもわたしの部屋にご飯をたかりにきているあの徹が!?信じられないと言った目で徹のことを見ているとそんなわたしに気がついたのか徹は「俺だって焼きそばくらい作れるよ」とへらりと笑った。徹がキッチンに立つと、キッチンが小さく感じられる。徹の身長にキッチンの高さが合ってない。


「もうすぐできるから」
「あ、ありがと」
「顔でも洗ってくる?」
「うん」


隣の部屋だけあって、部屋の作りは殆ど一緒だ。洗面台の前に立って、ボサボサの髪の毛にガサガサの肌の自分を見て、女子力のなさを思い知った。こんなわたしを好きでいてくれる徹は本当にいいヤツだなぁ・・・と妙に感心する。わしゃわしゃと顔を洗って、徹が使っている化粧水を借りた。男のなのに化粧水・・・。通りで肌がきれいなわけだよ、徹。髪の毛を適当に梳かして部屋に戻るとテーブルの上には徹がが作った焼きそばがあった。


「なんだ、徹って料理できないわけじゃないんだ」
「だって簡単じゃん、焼きそばって」
「そうだけど」
「凝った料理は真子さんが作ってくれるし」
「わたし凝った料理作ってないよ?」
「エッ」
「・・・美味しそう」
「食べようか」
「うん。いただきます」
「いただきます」


年下と付き合うなんて、頑張らなくちゃって思ってた。わたしが年上だからリードしなくちゃって思ってた。年下なんて子供っぽいんだろうなって思ってた。

全部違ってた。わたしが思っているよりもずっと、徹は大人だ。


「おいしい」
「それは良かった」


突然徹のところへ行くなんて、初めてのことだったのに。徹は何も聞いて来ない。だからわたしも、言わない方が良いのかもしれないって、勘違いしてしまっていた。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -