雨が降ってきた。朝家を出る前に見たテレビでは夜から雨が降るとお天気おねーさんが言っていた。それでも「帰るまで降らないでしょ」と傘を持たなかった自分が悪い。自覚している。

でも、それでも。


「まさか帰りに降ってくるとは思わなかったよ・・・」


会社を出たときはそんなに大降りじゃなかったから歩いて来たんだけど、駅について電車に乗っている間に次第に雨脚は強くなっていく。わたしが歩いて帰るまで雨よやめ・・・!と念じていたが効果はなく、結局改札出てから肩を落とすのだ。だってこの前もビニール傘買ったからもう何本も家にあるのにまた傘買うの!?いいかげん雨の予報が出たらビニール傘とか持ち歩こう、わたし。学習能力なさすぎ・・・。


「あれ、センパイも最寄りここだったんすか?」
「ええ!?桐谷くん!?」
「全然気づかなかった。まあセンパイはいつも朝一番に出勤してて、帰るのも一番ですもんね」
「ま、まぁね」


後ろから声をかけられ、だれかと思い振り返ったらそこには先日歓迎会を開かれた桐谷くんがいた。まさか最寄りの駅が一緒だったなんて。あ、なんか高そうな傘持ってる。くそう・・・やっぱりビニール傘買って帰ろうかな・・・。やみそうにないもんね、雨。


「あれ、センパイもしかして傘忘れたんですか?」
「そうなんだよね。これから傘買いに行こうかなって」
「俺の傘入って行きます?結構大きいから二人で入れると思いますけど」


!?
そ、それは相合傘と言うことでよろしいでしょうか。
いやいやいやいやいやこの前まで彼氏いない歴=年齢だったわたしがそんなぐいぐいハードル越えて行ったらまずいのでは!?というかこんなところ徹に見られたら何言われるかわかったもんじゃ・・・


「真子さん、その男と何やってるの?」
「・・・徹・・・」


どうして徹はいつもタイミングが悪いんだろう。この間の電話だってそうだ。わたしの都合の悪い時に、いつもこうして現れる。わたしと桐谷くんの何を見ていたかわからないけど、徹の顔は目だけ笑っていなくて、とても怖い。


「あーもしかしてセンパイの彼氏?」
「そ、そう」
「へぇ、ずいぶん若いんだねぇ」


桐谷くんが敬語で喋っていないから、その言葉がわたしに掛けられた言葉でないことくらい、すぐにわかった。徹はサッと顔色を変えて、“その男”が見えてないような行動を取った。


「真子さん傘忘れたの?俺の傘に入れてあげる」
「あ、ありがとう」
「俺今日肉うどんが食べたいなー」
「う、うん」


わたしと桐谷くんの間に入るようにして徹は並び、傘を開いた。その傘は桐谷くんのそれよりも小さくて、体をくっつけるようにして傘の中に入り、道路へ出た。


「センパイ、また明日」


何も言わずに立ち去ろうとしたわたしに桐谷くんは声をかけて、わたしは振り返ってしまう。そのわたしにつられて立ち止まった徹に向けて「またね、徹くん」と桐谷くんは笑いかけた。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -