大学から出された課題をこなさなくちゃいけない、と言っているのに。なんでわたしの部屋に入り浸っているんだろう。


「徹、起きて。もうお昼になるよ」


昨日の夜からわたしの部屋にやって来て、一人で勝手に映画見て、一人でお菓子ポリポリ食べて、そのままわたしのベッドで寝る。いい御身分ですね。同じ布団で寝るのはなんだかいやだったからブランケット一つ、床に丸まって眠った。起きたら体のあちこちが痛い。堅いフローリングで眠ったせいだ。今日が休日だったから良かったもの、仕事の日だったらぶっとばしているところだった。


「あと10分〜」
「いいかげん自分ちに帰りなさい」
「隣じゃんか。自分ちにいるのもここにいるのも変わらないよ」
「変わります。わたしのプライベートの時間を返せ」


わたしがそう言うと徹はムクリと起き上がって言った。「真子さんは恋人なのに、ずっと一緒にいたいと思わないの?」

・・・?


「ずっといっしょにいなくちゃいけないの?」


徹は少しだけ眉を下げる。あ、もしかしてわたしはまずいことを行ってしまったのかもしれない。後悔するのは、いつも口にしてからなんだ。恋人だから、ずっと一緒にいたいと思うのは当然なのかもしれない。でも、一人身が長かったわたしにとって、それは普通じゃないから。誰かと一日中一緒にいるって言うことに違和感を持つ。


「シャワー浴びてくる」


さっきまで寝ていたなんて思えないようなそんな態度で、徹はわたのしの部屋を静かに出て行った。


「一緒にいたいって ちゃんと思ってるよ」


でもこうして長い時間を一緒に過ごしてると、なにかボロが出てしまわないかって、心配になってしまう。嫌われたくない。ありのままのわたしを、いつも通りに生活しているわたしを見て、徹は幻滅しないか、心配なんだ。


三十分後、ピンポンとチャイムが鳴り、わたしは玄関まで歩いて行く。そこには髪の毛を濡らしたままの徹が、何食わぬ顔で立っていた。さっきまでなんだか悲しそうな顔をしていたのに、もう気持ちの切り替えをしてきたのですか。たくさんの課題を両手に持って、それをわたしの目の前にずいっとさし出すなり頭を下げた。


「手伝って!」
「ヤダよ分かんない!」
「大丈夫大丈夫。真子さんならわかるって」
「無理だよ!」


きっと学部ちがうだろうし、わたしにわかりっこない。無理無理無理。ここは断固拒否しないと。そもそも字が違うから・・・


「・・・口実ないと、真子さんちにいれないんでしょ?」


必死な顔をしてわたしにお願い事をしていた徹とは打って変わって、真剣な表情になるもんだから、わたしは思わずその課題を受け取ってしまった。


「そんなこと、ない」


会いたいって思う気持ちに理由なんてないから、会うための口実なんて、いらないじゃないか。


「わたしも その 一緒にいたくないわけでは、ないんだから」


素直じゃないわたしの口から出るのは、そんな言葉だけで、でも、全部伝わりきったようだ。「おじゃまします」と言い、徹はわたしの部屋に足を踏み入れる。


「今日のお昼ご飯なに?」


玄関においてけぼりのわたしを振り返り、徹は微笑む。そう言えばまだお昼ご飯を食べていなかった。

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