引越しのお手伝いしたからさ、びっくりしたんだよ。まさかわたしの部屋のお隣さんだなんて!わたしが住んでるアパートも空き部屋増えてきたな〜なんて思ってて、大家さんがこの間「新しい人が来るんだよ〜」とは聞いていたけど、それが徹だなんて聞いてないよわたし!!!段ボールに埋め尽くされた徹の部屋で、わたしは怒りを沸かせていた。


「遠くなるから、一人暮らしって言ってたじゃない」
「実家と遠くなるから、一人暮らしってことだよ」
「そうは聞こえなかった」
「真子さんの勘違いだよ〜」
「あああああもう!」
「いいじゃん。お隣さんなんだから」
「なんかよくない」
「そう?俺は真子さんとお隣さんになれて嬉しいけど」


徹が屈んで、わたしの耳元で「真子さんは嬉しくないの?」なんて言うものだから、手に持った荷物を落としそうになってしまった。食器が中に入っているって言うのに。危ない危ない。


「嬉しくない、こともない、ような気もしないでも、ない」
「それって結局どっちなの?」


徹はケラケラと笑い、持っていた服をクローゼットの中に仕舞い込む。徹の方がずっと年下なのにわたしよりも一枚も二枚も上手なのは、ずっと前から知っている。だからもう、年の差のことは考えないことにした。荷物をキッチンに下ろして、中に入っている食器棚に仕舞う。一人分だから量は多くない。んだけど、それにしても少なくない?この食器の数。


「ねぇ、食器少なくない?」
「うん。だって真子さんち隣じゃん」
「?????」
「しばらくは真子さんちでお世話になろうと思って」
「え?」
「えじゃなくて」
「どういうこと?」
「だってほら、俺達付き合ってるんだし」
「いやいやいやいやいやいやいや、意味が分からないよ!」
「半同棲って言うか」
「いやだよ!」


わたしがそうやって嫌だって言ったところで、徹に敵わないなんて、分かってるよ。でもなんでだろうね。言いたくなるんだ。


「いいじゃん。ね?」


わたしの手に持っている食器を徹は取って、そのまま食器棚に仕舞った。


「ありがとう」


別にね、手伝ってもらわなくたってわたし一人で食器くらい全部仕舞えたよ。


「うん。いいよ」


さっき耳元で囁いたみたいにして徹は屈んで、わたしにキスをした。


「・・・徹って好きだよね、キスするの」
「真子さんが悪い」
「なんで」
「真子さんじゃなかったらこうはならないからかなぁ」
「ちょっと良く意味が分からないです」
「分からないなら分からないままで良いよ」


ああくそう、なんでこんなにかっこいいんだよ


わたしは追いつけるのだろうか。
並んで立っていても見劣りしないくらいの女に、なれるのだろうか。

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