徹に避けられてる?

安売りしていた美味しいと思えない缶酎ハイを飲みながら携帯の着信履歴を確認した。電話なんて滅多に鳴らないから着信履歴から徹の名前を探すのは容易なことである。ポチポチとボタンを押すと、すぐに徹の名前が表示された。一週間前の日付とともに。


「い、一週間前」


メールボックスメールボックス。
電話だってねぇ、そんなにマメにするもんじゃないしね。ほらメールなら気軽にできるし、この間メールしたような気がする、し。

喉が渇いてぐいっと一口酎ハイを飲む。メールボックスを開いて徹の名前を探す。メルマガが受信ボックスのほとんどを占めていて、なかなか徹の名前を見つけることができない。あ!あった!


「い、いしゅうかん まえ」


えええええメールも!?そんなにしてないんだっけ!?
ここ最近仕事が忙しくて携帯いじってる場合じゃなかったからだよね?一週間ってあっという間だからだよね?わたし返事したんだっけ。なんだっけ。
急いで送信ボックスを開いて徹宛のメールを探す。あ、返事、してある。・・・つまり。徹から連絡が着てないってことになる。最後の着信だってわたしちゃんと電話出てたみたいだし。


わたしは 徹に避けられている。


最近駅のホームで見かけないなぁと思っていたよ。そういえばそうだった。テストでもあるのかなーだから学校早く行ってるのかなー程度の認識でした。仕事が忙しかったからしょうがない、しょうがない、しょうがない。缶酎ハイ全部飲みほして、何もかも忘れてしまう勢いで眠りに着いた。







「先輩それ自然消滅ってヤツじゃないですかぁ?」
「え、新野ちゃん冗談キツイ」
「冗談じゃないですよ。だって前はちゃんと連絡きてたんですよね?ほぼ毎日」
「う、うん」
「避けられてることは間違いないでしょうね〜」
「!!!!」
「やっぱりセックス拒んだのがダメだったんじゃないですか?」
「ちょ、新野ちゃん声大きい!」
「ロッカーだし大丈夫ですよぉ」
「そういう問題・・・?」


会社に着いて開口一番に言われる。今朝も駅のホームで徹を見かけることはなかった。絶対時間ずらして電車に乗ってる。一本後の電車は遅刻になりそうな時間だし、多分乗るなら一本前の電車だ。・・・うむ。


「どう思うんですか?先輩」
「なにが?」
「避けられてるかもしれないんですよ?」
「うーん」


後輩ちゃんはグロスを唇にのせて言う。セクシー。もう準備はとうに終わっているわたしはロッカーにもたれかかって後輩ちゃんがお化粧をするのを眺めていた。・・・相変わらずキラキラしてるなぁ。


「徹に会おうって思うよ」
「先輩やっぱり及川さんのこと好きなんですねぇ」
「改めて言われると照れるなぁ」


後輩ちゃんは天使みたいに笑って振り返り「さーて今日も張り切って仕事しますか!」と言った。カワイイ。







お酒を控えたその翌日。わたしはいつもよりも早くに家を出て駅を目指す。徹が一本前の電車に乗っているんだろうとは思っていたけど、あのねちっこい徹のことだ、二本前、三本前に乗っていることも考えられる。そのことを見越してのこの行動だ。駅はガランとしていて人の影があまりない。ホームへ行っても全然人はいない。人はいなかったから、よく見る背の高い男子高校生のことはすぐに見つけることができた。


「徹!」


早くに家を出てきて正解だったよ。こんなんでも徹と付き合ってるんだもんね。少しずつ徹の考えていること、分かるようになってきたよ。徹は自分が呼ばれているなんて思いもしなかったのか、微動だにしない。全然人いないんだから、自分が呼ばれたんだって気がつけよ!


「及川徹!」


ああそう言えば、徹って呼べるようになるまで、時間かかったなぁ。


「わ、真子さん!?」
「なっなんで連絡、ゲホゲホ!」
「ダイジョーブ?」
「むせただけ・・・」
「そっかよかった」


こっちを向こうとしない徹を捕まえるように、制服の裾を引っ張った。するとやっと徹はわたしの方を向いて、驚いたように笑う。・・・なんで笑ってるのよ。


「どうしたの。こんな朝早く」
「どうしたのはこっちのセリフだよ」
「エ?」
「・・・なんで連絡くれないの」
「エ?」
「〜〜〜〜なんでもない!」


寂しがってる 彼女みたいで。
すごく居心地が悪い。


「なんでもないわけ、ないデショ?」


大きな背を丸めるようにして、わたしの肩に触れる徹が、なんだかどうしようもなく愛おしくて。


「えっと、」
「正直言うと、真子さん怒っちゃったかなって思って。顔合わせにくかったんだ」
「・・・徹が!?」
「エッ!そこ驚くところ?」
「ほぼ初対面でチューかましてきた徹が!?」
「・・・ともかく!」
「はい」
「これからは普通にするからサ」
「・・・うん」
「真子さんがこんな朝早く、駅にくるなんて想像もしなかったよ」


朝日がホームに射して、




徹が好きだな なんて実感しちゃったじゃないか。

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