「ね、真子さんち行ってもいい?」


いつでも徹は突然で、そしてわがままなんだ。


「え、ヤダ」
「ナンデ!?」
「やなもんはヤだ」
「いいじゃん!真子さんち行ってみたい!!」
「良くないよ」
「ナンデ!?」
「掃除してないし」
「大丈夫。俺の部屋も大概キタナイから」
「それは徹の部屋がでしょ。わたしの部屋掃除してないけど整頓はしてるもの」
「じゃあ平気じゃん。さーレッツゴー!」


徹はわたしの手を取って、わたしがいつも利用している電車に乗り込んだ。徹の家は反対方向にあるのに・・・。徹を追い出そうとしたがプルルルルという発車のベルが響き、それはできずに終わった。はぁと溜息ひとつついて徹の方を見るとすでに席に座っていて、隣をぽんぽんと叩いた。そこへ座れと言うことなんだろう。このワガママ男子高校生め。


「アッ!なんかご飯とか買っていくべき?冷蔵庫なんかある?」
「・・・君は何時までわたしの家に居座る気なの?」
「泊っちゃだめなの?」
「ダメだよ!明日仕事だし、第一徹だって学校あるでしょ!」
「ちぇー」
「ちぇーじゃない」
「けちんぼ」
「けちじゃない」


こうやって言い合いをすることも、実は楽しかったりする。でもそれを徹に伝えたら、なんだか負けのような気がしてならない。


「・・・・そう言えばさ、なんで出会えたんだろうね、わたしたち」


だって徹の住んでいるところはわたしの家とは反対方向にある。徹は駅のホームでわたしを見かけていたと言っていたけど、わたしが初めて徹と出会ったのはわたしの家の近くの大通りであって、駅のホームじゃない。


「さぁ?」


徹はすっとぼけたように言い、「運命なんじゃない?」と意味深に笑った。


「・・・もしかしてわたしのストーカーだったの?」
「そんなわけないジャン!寝坊して間違えて電車乗っちゃって開き直って散策してたらぐーぜん、真子さんに出会ったんだよ。本当だよ」
「ふうん?」
「あ、信じてないネ」
「うん」
「色んな偶然が積み重なって出会うべくして出会ったんだよ」
「うわ、クサイ」
「さっきから色々ヒドイ」
「ひどくてごめんね」
「いいよ」
「へ?」
「真子さんなら許す」
「なんでそんなに偉そうなの」
「彼氏だからかな」
「・・・もうすぐ降りる駅だよ」


わたしがそう言うと、徹は思い出したように「ああ、この駅だったっけ」と席を立った。

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