「仲直りしたんですね」


会社に一番に着いて、二番目は珍しく新野ちゃんだった。花瓶の水の入れ替えをしていたわたしに新野ちゃんは話しかけた。


「え、なんでわかったの!?」
「鼻歌、歌ってましたよ」
「嘘!?」
「ウッソー」


新野ちゃんはあははと笑って見せ、「仲直りできて良かったですね」とぽつりと言った。水の入れ替えを終えて定位置に花瓶を置く。なんだか恥ずかしくなって、頷くだけにしておくと、「先輩は分かりやすいんだから」と言う。新野ちゃんはすごく素敵な女の子で、この子と同じ人を好きになったんなんて不思議な感じがする。徹って、もしかしたらすごいんじゃないの。


「及川さんのおかげだったんですね」
「・・・なにが?」
「先輩が奇麗になったのって」
「え!?」


新野ちゃんは「わたしにもいつかそんな人が現れるのかな」と独り言のように言ったけど、今でも十分カワイイよ。これ以上可愛くなったらいったいぜんたいどうすんの。求婚者が後を絶えないんじゃないの。ヴヴヴと制服のポケットが震えて、体を固めると「あ、もしかして及川さんから連絡ですか?」とにやにやいわれるものだから、こっそり確認すると徹からのメールを受信していた。わたしに連絡してきてくれるのは徹くらいなもんだ。


「やっぱ悔しいなぁ」


新野ちゃんがぽつりとそう言うから、わたしは携帯から顔を離して新野ちゃんを見つめる。「悔しいから絶対及川さんよりもいい男捕まえてやるんだから」


「うん。楽しみにしてる」


どんな人を新野ちゃんは彼氏にするのか、楽しみにしてるよ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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