徹にどういうことなのか確かめる勇気はわたしにはなくて、後輩ちゃんに徹の彼女はわたしなんだよと言う勇気もない。じゃあ一体どうしろって言うのさ。駅のホームで徹の後ろ姿を見つけて、わたしは引き返した。


「ちょっと待ってよ、真子さん」
「・・・」


きっと徹は目が良くて、勘も鋭くて、だからわたしは見つかっちゃうんだろう。引き返したわたしの腕を徹は掴んで、切なげな声でわたしの名前を呼んだ。避けられてるって、思われてしまったのかもしれない。避けたいわけじゃないけど、どんな顔して徹に会えばいいかわからない。わたしが振り返らないからなのか、徹はわたしの腕を掴む力を強くする。「痛い」と絞り出すような声で言うと、徹は「ごめん」とは言ったけど、その力を緩めることはなかった。


「真子さん」


学生服姿の徹と、OLの制服のわたしは、周りからどんなふうに見えるのだろうか。恋人のように、見えるだろうか。不意に鳴りだす、電車が発車するベルの音に、わたしの肩は震える。その電車に乗り込もうと、駆け足で通り過ぎて行く人がいる。わたしたちは動けずにそこにいた。


「徹の馬鹿」


なんでわたしのことを好きと言っておきながら、他の女の子にもいい顔するんだよ。徹の気持ちがわたしには理解できない。


「徹の馬鹿」
「馬鹿でもいいよ」
「良くない」
「なんで俺を馬鹿だと思うの?」


なんでこんな気持ちにならないといけないの。


「言ってくれなきゃ、わかんないよ。俺どうしたらいいの?」
「徹の馬鹿」


言わなきゃ分かんないことくらい、わかってる。でも、でも、


「どうして、徹は」


わたしのこと、ちゃんと好きじゃないの?
わたしのことをちゃんと好きなら、どうして?


「あれ・・・先輩?」




なんでこういうときに限って来るんですか、後輩ちゃん。

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