来る土曜日。残念ながら二日酔いにはならずに朝を迎えることになった。はあああとまた長い溜息をついてカーテンを開く。晴れ、デート日和。顔を洗ってしゃきっとしない頭でクローゼットの中身とにらめっこを始める。結局徹と買い物に行ったときに買った服を着ることにした。合コンのときとは違う服。花柄のワンピースに身を包んで、「・・・大丈夫かな」と呟いた。









時間より早く着くとデート楽しみにしていると思われそうだから、時間ぴったりに着くように家を出る。今日はちゃんと携帯を持った。忘れ物はない。外出用のパンプスが慣れなくてつまずいてしまう。駅についていつもよりラフな格好をした徹が目に入って「しまった」と思った。昨日電話で遊園地へ行こうと言われたことを思い出す。遊園地なのにワンピースでしかも履き慣れてないパンプスって!完全に着てくる服を間違えた。Uターンをして家に戻ろうにも約束していた時間が迫っている。あーもう。立ち止まって肩を落とすと、わたしに気づいた徹が小走りになってやって来た。


「おはよ〜」
「おはよう」
「あ、真子さん、来てきてくれたんだ」
「・・・うん」
「なんで浮かない顔してるの?二日酔い?」
「違う」
「じゃあどうしたの」
「言っても笑わない?」
「内容によるな〜」
「言わない」
「ウソウソ!笑わないって!」
「・・・遊園地行くのに」
「行くのに?」
「ワンピースで、パンプスで」
「うん」
「遊園地行く格好じゃないじゃん」
「うーん」
「着替えきていい?」
「ダメ」
「なんで」
「だってそれじゃ俺が真子さんと一緒にいられる時間が少なくなっちゃうじゃん」
「へ?」
「だからいいよ、今日はその格好で」
「でも」
「ボウリングなら大丈夫じゃない?」
「ボウリング?」
「うん。ワンピースがちょっとハラハラしちゃうけど。靴も貸出てもらえば平気」
「わかった」
「よし、行こう」
「待って」
「何?」
「わたしすごくボウリング下手なんだんだけど」
「あはは!大丈夫大丈夫!」


さりげなくわたしの手をつないで徹は歩き出した。急いでる感じはしない。わたしの歩幅に合わせて、わたしの半歩先を歩く。

あーあ、わたしの方が年上なのに。いつも徹に丸めこまれている。慣れないパンプス履いて、可愛いワンピース着て、なのに時間ぎりぎりに着くようにするなんて、気合入ってるのに、それを見せないように振る舞っていることなんてすぐにわかってしまうじゃないか。恋人ができることが初めてで、その上相手はわたしよりも年下。徹に対して背伸びはしたくないのに、している自分がいる。徹の方が年下なのに、わたしが背伸びをしないと、徹と並んで歩くことができない気がする。


「もっと頑張らなくちゃ」


わたしの中で何かが変わっていく。いつも二言目には素直じゃないことを口にしてしまう、可愛くないところがある。けれど徹に釣り合う女になりと思うんだ。徹の手を握る力を少し強めると、それに気がついたのか徹は振り返って、嬉しそうに口角をあげた。

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