花の金曜日。みんなが浮足立つアフター5。彼氏はできたけれどいつも通り何の予定も入っていないわたしはスーパーで適当に総菜を買って、あとは寄り道せずまっすぐ家に帰る。こういう日は飲むに限る。

家に着いてから楽な格好に着替えてキッチンまで小走りで行く。買ってきたお惣菜を適当に皿に盛り付けて冷蔵庫からビールを取り出した。明日は休み。飲まなくちゃやってられない。座る前に放り投げた仕事用の鞄から携帯を取り出す。相変わらずメールも電話もなにもない携帯電話。これ持ち歩いてる必要ってあるのかな・・・。部屋には固定電話ないから持っていなくちゃだめか。いざというときに必要になるから。・・・いざっていつよ。良く分からない自問自答をしながら椅子に座る。プシュ、と音を立てて缶ビールを開けて、グラスに移さずにそのままゴグゴグと喉を鳴らし飲み干す。生きていて よかった。買ってきたお惣菜をつまみにそのまま一人飲みを続ける。ビールが終わったら酎ハイ。デザートに甘いリキュールを使った簡単なカクテル。美味しい、美味しい、美味しい。趣味とか楽しいことが見つけられなくて、ふとやり始めた一人飲みにすっかりはまってしまっていた。どこが面白いか分からないバラエティ番組を見て空笑いを続ける。グラスを口に着けたところで、また自問自答が始まった。「恋人って 何なんだろう」ぽつりと呟く。わたしの携帯電話は先ほどと変わらずに無言を貫いている。そんなに気になるなら自分から連絡すればいいのにね。「誰に?」そりゃ勿論、及川徹に、でしょ。「いやーないって、ナイナイ」なんでそんなに怖がってるの?「怖がってる?わたしが?まさか!」じゃあなんで連絡取らないの?「なんでって・・・なんでだろう」カクテルを口に含み、少し考えてみる。なんでだろう。やっぱりいまだに遊ばれてるとか思ってるのかな、わたしは。でもすぐにすぐ考えなんて変えられるものじゃないし・・・。


ヴーヴーヴーというバイブ音で現実へ連れ戻される。はっとして携帯電話を見ると誰かからの電波を受信していた。グラス片手に携帯に手を伸ばす。そこには及川徹と表示されていて、わたしは慌てて通話ボタンを押した。


「もしもし」
「あ、オネーサン?」
「(またオネーサンって言った)」
「今何してたの〜?」
「お酒飲んでた」
「飲み会?なわけないよねー」
「うるさいな」
「え、なになに機嫌悪いの?」


グラスに入っていてたカクテルを一気に飲み干して、乱雑にグラスをテーブルに置いた。


「別に?」
「オネーサンは嘘がヘタクソなんだから」
「何か用?」
「明日暇?」
「・・・暇じゃない」
「そっか、じゃあ明日遊園地行こっか!」
「暇じゃないって!」
「なんか予定あるの?」
「・・・ある」
「強がっちゃって。じゃあ明日10時に駅ね!」


ブツッと電話が切れる。はあああと長い溜息をついて、もう一杯カクテルを作った。


「二日酔いで行けないって言ったら、徹どうするんだろ」


二日酔いになりそうな気配はしない。

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