一カ月に一回という頻度で席替えをしているわけですが。まさか、まさかこうなるとはね。


「よろしく花宮くん」
「・・・」


わたしがそう声をかけても返事をしてくれることのない花宮くんにいらっとしつつ椅子に座った。今回の席替えで隣になったのはまさかの花宮くんで、わたしはがっくりと肩を落とした。いや、嫌いじゃなくなってきたとは思ったけど、やっぱり花宮くんは得体の知らない人物であることは変わりない。つまり、苦手なわけです。花宮くんはわたしを一瞥もせずに黒板を見てるのか先生を見ているのか、気だるそうに背もたれに寄りかかっている。


数学の授業。
この間あった小テストの答案が帰ってきた。可もなく不可もない点数の答案用紙を返される。隣の花宮くんのテストをちらりとみたら丸しかなくて、わたしは驚いた。点数のところを折り曲げることなく花宮くんは答案用紙を机に放り出している。


「ひゃ、ひゃくてん」


百点なんて久しく見ていない。わたしがぼそりとひとりごちたことが花宮くんの耳に入ったのか、わたしのことをチラリと見て行った。「バァカ」


やっぱり花宮くんのこと 嫌いかもしれない。


「・・・頭いいんだね 花宮くん」
「普通だろ」
「百点なんてすごいよ」
「すごかねぇよ」


と思ったのに、花宮くんは以外にもわたしの言葉に耳を傾けてくれていて、言葉を返してくれる。嫌なヤツなんだかなんなのか、わからない。


「今度勉強教えてよ」
「は?やなこった」


そう来ると思いました。
先生の解説を聞いてもちんぷんかんぷんで、教科書見ても答えが見えない。黒板に敷き詰められた文字を答案用紙に書き写す。全然理解できないけど、先生はどんどん先の問題の解説を始めるものだから、わたしは理解するのを諦めた。すると頬杖をついた花宮くんがわたしの答案用紙にすっと手を伸ばしてきて、一つの数字を指さした。


「ここが違う」
「え?」
「こっちが負でこっちが正」
「ほうほう、それで?」
「後は自分で解け」


答案用紙を指先でとんとんと叩き、わたしにヒントをくれた花宮くん。いいヤツなの?本当は。

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