気づいたら、好きになっていた。
彼女のひたむきな姿勢とか、頑張ってる姿を見ていたら、気づいたら好きになっていた。
誰もがやりたがらないような委員会の仕事を引き受けて、嫌な顔をせずこなしていく。僕はなかなかにひねくれているところがあるから、最初の内は都合がよくて断れない人なのかなと思っていたけど、どうやらそういうわけじゃないらしい。

彼女が頼まれて、みんなのノートを回収して職員室まで持っていかなくちゃいけなくなったとき、僕は彼女に声をかけた。

「僕も手伝うよ」
「え、松野君いいの?」
「うん。一人で運ぶのは大変でしょ?」
「ありがとう!助かる」

彼女は真面目なんだ。頼まれたら断れないんじゃなくて、責任感があるんだ。だから必ず頼まれたことは成し遂げようとするし、中途半端で終わらせようとはしない。もしかしたら少し、完璧主義なところがあるのかもしれない。手を抜いていいような場面だって彼女は全力で取り組む。体育祭の実行委員に選ばれた時も、実行委員の仕事もやって、クラスの練習にもちゃんと顔出して、って。文化祭もなにするかも揉めた時だって彼女が結局クラスをまとめて、お化け屋敷やって利益を叩き出したりと、彼女はひたむきで、そして、努力家だった。

そんな僕は、気が付いたら彼女と肩を並べて歩けるような人間になりたいと、考えるようになった。

それからは勉強もいままでよりは真面目にしたし、彼女にいいように見られたいがために、彼女の抱える仕事を手伝った。
彼女の恋人になりたい、と思わなかったわけじゃない。ただ、僕は、彼女と対等でありたかった。

「松野君は、なんでわたしのことを手伝ってくれるの?クラスのみんなは手伝ったこと一度もないけど」
「江川さんはなんで誰にも手伝ってって言わないの?」
「だってそりゃ、松野君が手伝ってくれるから」

あぁ、僕の気も知らないで、そんなこと簡単に言えちゃうんだね。好きが重なる。

「そんなこと言わないでよ、僕が江川さんを好きになったらどうするの」

言ってから、しまった、と思った。もうすでに好きだし、なんでこんなこと言っちゃったんだろうって後悔した。だけど、なんかもう、自分でも自分の気持ちを制御することができなくて。

彼女は持っていたノートを、ばさばさと、落とした。

「大丈夫?」
「だいじょうぶじゃない!」

心の中ではすごく焦っていたけど、僕は冷静を装って、床に散らばったノートを拾う。彼女は僕の前にぺたりと座り込んで、僕の目を覗き込んだ。

「好きになったら、どうするの?」
「考えて、ない」
「考えて、くれないの?」

まっすぐ見つめられて、僕は息を飲む。もうとっくに好きでした、なんて今更白状しても、いいのだろうか。

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テーマ「人外ファンタジー」
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