「安定―、餃子包むの手伝ってくれないかなぁ」
「僕が?僕より清光の方が適任だと思うんだけど。器用だし」
「ネイルしたばっかみたいだからさ」
「わかった」


ボウルにはたくさんの餃子の餡。せっせと作った餃子の皮。安定と台所に並んでどんどん包んでいく。これだけの量だ。早くやらないともうすぐ夕餉の時間になってしまう。安定はわたしの包み方をじーっと見つめていて、わたしがやり方を教えてあげると「やってみる」と言って包み始めた。一心不乱に餃子を包んでいく。


「・・・安定」
「なに?」
「なに?じゃなくて、なにそれ」
「餃子」


安定の前には皮がやぶけて餡が出ている餃子っぽいものや、ちゃんと口がふさがっていない餃子っぽいものが置いてある。安定は「結構難しいね、包むの」と言って、また餃子を包み始めた。気づかなかったわたしが悪い。ただ、ここまで安定が不器用だとは思わなかった。


「ストップストップ!」
「なに?今包んでるんだけど」
「もうちょっと丁寧に」
「してるよ」
「あ、うん。そうだよね。してるよね」
「集中してるから静かにして」
「・・・えーっと」
「何が言いたいの?」
「安定の包み方なんか変」
「そんなこというならもう手伝わない」
「ごめんごめん!貶してるとかじゃなくて」
「はぁ」


ため息つかれた・・・。
安定は「やっぱり清光に任せた方がよかったんじゃない」なんて悲しいことを言いだすから、そんな安定に「わたしがやるのよーく見てて」と言って、もう一度わたしが包んでいるところを見せる。その後安定に包ませてみて、おかしなところを指摘していく。「右手こうするといいよ。上手にヒダできるから」「難しい」「うーん」「こう?」まだやり方が分かっていない安定の右手に自分の右手を添えて、一緒に包んでやると安定はコツが分かったように目をきらきらにさせて「こうすればいいんだね!」と言った。

なんだ、やっぱり自分でも上手く出来てなかったって、自覚してたんじゃないか。

「うん。そうそう」
「ほら、上手にできたよ」
「すごいねー」
「主も早く包まないと夕餉の時間が来ちゃうよ」
「そうだね」
「どっちが早く包めるか競争しよう」
「負けないよー」


あんなにあった餡をすべて包み終えて、パリパリに焼き上げる。形の奇麗な餃子は刀剣のみんなの分。安定が最初に包んだぼろぼろの餃子はわたしの分。安定は「形崩れたヤツ、僕が食べる」と言っていたが、それを断って、自分のお皿に乗せた。見た目が違うだけで、味はそう大差なさそうだし。なによりも安定が初めて作った餃子だったから、わたしが食べたかったんだ。


「ありがとうね、安定。助かった」
「それならよかったよ」
「うん。じゃあみんなを呼んできてくれるかな」
「わかった」

安定はわたしに背を向けて台所から出て行こうとする。その背に向かって「また手伝ってくれる?」と聞くと、いたずらっぽく笑って「どうしようかなぁ」と安定は言った。そんなこと言っても結局、手伝ってくれそうな気がするのは、わたしだけだろうか。

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