間違い電話以降、新開くんに会うことはなかった。わたしも避けていたから、新開くんがいそうなところにはいかなかった。学食は特に遭遇しそうだったから全く行かなかった。毎朝早起きをしてお弁当を作って、校内のベンチで食べている。そう、今も食べている。今日のお弁当は鶏の照り焼きと出汁巻き卵と小松菜のお浸しと切干大根。出汁巻き卵がちょっと崩れちゃったけど、それを抜かしたらほとんどパーフェクトのでき。すばらしい。

新開くんに、会いたくなかった。

飲み会の席で、なんかの拍子にわたしに電話した新開くんに、会いたくない。あれからもう二週間くらいたつのに、いまだに思い出してはモヤモヤしている。こんなのわたしらしくない。・・・わたしらしくって、なに?

あの後新開くんから弁解の電話なんて無く、新開くんからの接触も無く、平和に過ごしていた。弁解の電話が欲しいわけではないけど、酒に酔っていたとはいえ、どうしてそんなことを言いだしたのか、気になった。


 いま、俺は君にあいたいです!


それが本心なのか、なんなのか。確かめる勇気は、わたしにはない。



(・・・あ、)


会いたくない時ほど、見つけてしまうのはなぜなんだろう。わたしが座っているベンチから離れたところに、新開くんの姿が見えた。視力が良いわけじゃないのに。会いたくなさ過ぎてアンテナの感度が良いのかもしれない。お弁当をそそくさと鞄にしまう。はやく、ここから立ち去らなくちゃ。新開くんに見つかってしまう。ベンチから立ち上がって、鞄を持つ。行くあてもないけど、新開くんから逃げたくて。


怖いから逃げる。何がいけないことなんだろう。


何からわたしは、逃げているんだろう。



「あ」



手に持った鞄を地面に落した。お弁当が、きっと中でぐちゃぐちゃになってしまったことだろう。わたしのこころのなかみたいだ。新開くんに出会ってから、わたしの心はいつもぐちゃぐちゃなんだ。



「千代ちゃん!」


そんなわたしの心の内を知らないから、新開くんはわたしに声をかけられるんだね。



「・・・新開くん」

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