朝目が覚めると、出汁のいい香りが本丸を満たしていた。


「あああッ寝坊!!」


刀剣男子が増えてきて、わたしが畑仕事しなくても、馬のお世話しなくても、掃除しなくても、刀剣男士達が係を決めてやってくれるようになっていた。だけどご飯だけは、わたしがやっていたのに。昨日遅くまで兵法の勉強をしていたせいか、いつもより起きるのが遅かった。慌てて着替えて、髪の毛もとかさずに台所まで行くと、燭台切がわたしのエプロンを身につけた後ろ姿が目に入った。


「うん、美味しくできたよね」


このいい香りをさせていたのは、燭台切だったのか。味噌汁の味見でもしているのか、燭台切はコンロの前から離れない。


「さて、味噌汁もできたことだし、主を起こしに行こうかな」


燭台切はわたしのことに全く気づいていないらしい。くるりと振り返ってわたしの姿を見つけると目を丸くしてから、ふわりと笑った。普段かっこいいくせに、こういう笑い方するから燭台切はずるいと思う。


「おはよう、主」
「・・・おはよ」
「今起こしに行こうと思っていたところなんだ」
「いい匂いがして、目が覚めたんだ」
「今日は僕がご飯を作ってみたんだ。いつも作ってくれてるお礼に」
「燭台切って料理上手なんだね」
「主の口に合うかはわからないけどね」


こんなに出汁のいい香りがするんだから、まずいってわけないに決まってる。燭台切はエプロンを外すとそれを傍らに置いて、「じゃあみんなを起こしに行こうか」とわたしの肩をポンと叩いた。敵わないな。


「燭台切はかっこいいし、頼りがいあるし、頭良いし、敵わないなと思ってたけどさらに料理もできるなんて本当に敵わないや。お嫁に欲しい」
「ははは、主は女性なんだから、僕が主をお嫁に欲しいくらいだよ」
「・・・は?」
「さぁ、誰から起こしに行こうか」


涼しい顔して、何言ってくれてるの、燭台切。呆気にとられたわたしを置いて、すたすたと先行く燭台切。あれ?ちょっとだけ耳赤くなってるみたいだけど、気のせいかな。

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