お風呂上がり、夜の10時過ぎ、電話が鳴った。

新開くん

と表示されている。わたしはためらいがちに通話ボタンを押した。
間接チューをした日から、新開くんと関わることが怖くなってしまった。これ以上新開くんと近しくなってしまったら、わたしはきっと新開くんを好きになってしまう。そのことが怖くて、わたしは新開くんの姿を見つけるたびに逃げるようになった。
でもこうやって電話にでちゃったら、意味ないよなぁ。


「もしもし」


受話器から聞こえるざわざわとした雑音。新開くんの声は聞こえてこない。これは・・・きっと間違えて電話かけちゃったんだろう。どうやらいまお取り込み中で忙しいようだし。この雑音はきっと居酒屋かそういった類のところのものだろう。電話にでるんじゃ、なかった。
溜息をひとつついて、電話を切ろうと耳からスマホを離す。


「千代ちゃん!」


途端に聞こえた新開くんの大きな声に、わたしはもう一度耳にぴったりスマホをくっつけた。


「いま、俺は君にあいたいです!」
「・・・新開くん?」
「・・・」
「おーい」
「・・・」


またざわざわと雑音が続いて、新開くんの声は聞こえなくなった。
どくどくと脈打つこの心臓はスピードを上げていく。

新開くんの せいだ。


「新開くん、酔ってるでしょ。君」


翌朝覚えてないって言われたら、わたし、絶対へこむ。間違いなく。
へこむって思ったってことは、ああ、わたし、好きになってしまった。新開くんを、好きになってしまった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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