そういえば電話はよくするけど、あの合コンの日以来合ってないんだよね。わたしと新開くん。よく電話してるから、顔合わせて喋っているような気がするんだけど。友達はそんなに多くないし、ぼっち飯も平気なわたしは今日も一人でお昼ごはんを食べるべく、学食に行き食券のボタンをぽちっと押した。今日のA定食はカツ丼だったからね。一人暮らしだから家で揚げ物することなんてほとんどない。カツなんて久しく食べてない。学食のおばちゃん、いやおねえさんに食券を渡すと、後ろから「あれ?千代ちゃん?」と声をかけられた。わたしのことをちゃん付けで呼ぶ人は少ない。しかも男の声だった。だからわたしを呼んだのが誰かなんて、すぐに見当がついた。


「新開 くん」
「ここで会うの初めてだね」
「ウ、ウン」


電話越しで聞く新開くんの声と、目の前にいる新開くんの声は違って聞こえる。電話の声の方がしっくりするなんて、電話のしすぎだね。新開くんの後ろには自転車部っぽい人達が連なっていて、「先どーぞ」とその人たちに食券を買うように促した。


「千代ちゃんなににしたの?」
「A定食」
「カツ丼?」
「うん。家じゃあんまり揚げ物しないから」
「俺もA定食にしよ」
「えっ」
「次のレース勝てるように」
「ああ、ナルホド」
「俺も一緒に食べていいかい?」
「いいけど、お友達じゃないの?」
「どうせあいつらとは部活のときに会えるから」


新開くんは口角をあげて笑うと、ボタンをポチっと押して食券を手にした。それをおねえさんに手渡すと。ばちんとウィンク。・・・うーん?


「どこ座る?」
「端っこがいい」
「わかった」


だって新開くんと二人いたら、目立っちゃってしょうがないよ。


「楽しみだね、カツ丼」
「うん。俺はそれも楽しみだけど、千代ちゃんとお喋りできるのも楽しみだよ」
「いつも電話してるじゃん」
「そうだけど、ちゃんと千代ちゃんの顔見たの久しぶりだからサ」
「合コンぶりだもんね」
「だから目に焼き付けておきたいんだ」
「!!!」
「またしばらくレースで遠征だからね」


なんでそんな涼しい顔して、そういうこと言うのかなぁ。おねえさんが「A定食できたよー」とわたしを呼んでいる。赤い顔を隠すように下を見て向かった。半熟の卵が美味しそう。わたしの肩の後ろから顔をのぞかせて新開くんは言った。「美味しそー」危うくわたしはA定食を落としてしまうところだった。


「しししし新開くん!」
「? なんだい?」
「わ、わたし座ってるから!」


足早二端っこの開いている席へ向かう。これ以上新開くんと一緒にいたらわたしダメになる!新開くんがわたしにバキュンポーズしたとき、わたしは恋には落ちなかったけど、あれってもしかして時間差攻撃なの?

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